研究成果:

2021年2月26日

プラズマからのエネルギー出力をコントロール

大型ヘリカル装置の重水素プラズマ実験において,回帰解析法という,“一つのパラメータが他のパラメータにどのように依存しているか”を表す手法を用いて,中性子発生数と外部から制御可能な計測パラメータとの依存関係を調べました.その結果,中性子発生数は,プラズマ密度と加熱パワーを用いた簡潔な数式で書けることが分かりました.この成果によって,将来の核融合エネルギー出力を制御するための一手法を手に入れることができました.

2021年2月19日

データ解析手法の工夫で解像度大幅アップ

大型ヘリカル装置(LHD)で取得されたプラズマ表面の渦データに対して「最大エントロピー法」を適用し,渦の成分分析の解像度を大幅にアップさせることに成功しました.プラズマを安定に制御するためには,発生する渦の運動原理を理解することが必要です.その第一歩として,発生する渦の細かさや回転の速さを正確に知ることが求められます.新しい解析手法を用いることで,渦の成分を詳細に分解できるようになりました.

2021年1月22日

プラズマにさらされる壁への熱負荷を計測するシステムを構築

核融合炉のダイバータ板と呼ばれる場所には局所的にプラズマが流入し,大きな熱負荷が予想されるため, その熱負荷を高精度に計測する必要があります. 本研究では, 大型ヘリカル装置(LHD)において,2次元かつ高い空間分解能をもつサーモグラフィと熱伝導解析を組み合わせて, ダイバータ板の熱負荷を高精度に計測するシステムを構築しました.これより, LHDのダイバータ板が受ける熱負荷を詳細に解析することが可能になりました.

2020年12月22日

プラズマ中の揺らぎの回転が減速するメカニズムを解明

大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマを閉じ込め磁場には, 回転する揺らぎが生じることがあります. そして, この揺らぎの回転速度がほぼゼロになるまで低下した後に,揺らぎが急増し,プラズマの閉じ込め性能が急激に劣化する現象が観測されています.本研究では揺らぎの回転の減速機構を実験的に解明しました.減速は揺らぎの増減に密接に関係しているので,この成果は炉心プラズマの深刻な性能劣化を引き起こす揺らぎの急増を回避あるいは抑制させる研究を加速させます.

2020年11月12日

中性子由来の信号評価により,人工ダイヤモンドを用いた高エネルギー粒子研究が可能に

大型ヘリカル装置(LHD)では,プラズマ中の高エネルギー粒子の閉じ込めを研究するために,人工ダイヤモンドを用いた中性粒子分析器(NPA)を開発しました.しかし,このNPAには,中性子が発生する環境下では中性子由来のノイズが発生してしまうという問題があります.本研究では,このノイズを評価するために,東北大学と共同で,NPAにおける中性子の影響を明らかにしました.これにより,LHDにおけるNPAの信号から中性子由来のノイズを分離して,高エネルギー粒子の研究ができるようになりました.

2020年11月12日

光の計測により電子の運動の偏りを世界で初めて検出

大型ヘリカル装置(LHD)において,水素原子が放出する光の偏光度を1%の精度で精密に計測することに成功しました.また,偏光角の解析から,プラズマ周辺部の電子については,磁場に垂直方向の運動が平行方向の運動よりも優勢であることが示され,これまでの直感的理解を支持する結果となりました.

2020年10月28日

64画素百万フレーム毎秒で映し出すプラズマゆらぎ画像

大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で使用するための超高速カメラを用いた計測装置の開発を行いました.プラズマ発光をカメラ用望遠レンズで取り込み,光ファイバーで計測装置に伝送します.超高速カメラは縦・横8x8の合計64画素しか持たない代わりに,百万フレーム毎秒の撮像スピードを誇ります.この高速撮影に特化した装置を用いて,プラズマの濃淡の高速変化を映し出すことに成功しました.

2020年10月19日

人工ダイヤモンドを使用した熱中性子計測

大型ヘリカル装置(LHD)の重水素プラズマ実験において,人工ダイヤモンドを用いた熱中性子計測手法を確立しました.出力される電気信号の形状による信号振り分け手法を導入することで,従来の方法の1.5倍程度の効率で熱中性子計測が可能になりました.この成果は,核融合発電で発生する中性子の管理や燃料増殖率の高精度評価に繋がるもので,核融合炉開発研究を大きく進展させます.

2020年9月14日

ビッグデータにプラズマの状態を語らせる

大型ヘリカル装置(LHD)におけるプラズマ実験で積み上げた大量のデータを使ってプラズマの状態を把握する手法を開発し,その実用性を示すことに成功しました.この成果は,核融合研究で蓄積されているデータを最大限活用する方法の道筋をつけるとともに,プラズマのリアルタイム制御などに向けた研究を大きく進展させるものです.

2020年8月27日

高イオン温度状態の維持を妨げる原因を探る

大型ヘリカル装置の高イオン温度プラズマ放電においては,プラズマを加熱する高エネルギーイオンが起こす磁場振動の発生によって,イオン温度が低下してしまう現象が観測されてきました.今回,重水素プラズマ実験の中性子発生分布を計測することで,高エネルギーイオンがこの磁場振動によってプラズマの外に逃げていることが分かりました.この結果に基づき,高イオン温度状態を長時間維持するための手法の構築が期待されます.

2020年8月25日

プラズマ中の波と共鳴する高速イオンの直接観測

大型ヘリカル装置(LHD)では,核融合反応によって生成される高速イオンの閉じ込めを調べるために,その粒子を模擬した,中性粒子ビーム入射装置(NBI)によって生成された高速イオンを用いて実験を行っています.この高速イオンがプラズマ中の波と共鳴すると,波が大きくなって高速イオンをプラズマの外へと吐き出し,プラズマの性能が低下することが問題となっています.本研究では,吐き出された高速イオンを直接計測して,そのエネルギー分布の詳細な時間変化を観測することに成功しました.これにより,波と相互作用する高速イオンの詳細な振る舞いが解析できるようになりました.

2020年6月17日

大型ヘリカル装置におけるビームイオン閉じ込め時間の定量的な評価

大型ヘリカル装置(LHD)の重水素実験で発生する中性子発生量の計測結果と統合シミュレーションを用いた解析により,中性粒子ビーム入射装置(NBI)によって生成されるビームイオンが,プラズマ中にどれだけの時間,留まっているのかを明らかにしました.これは重水素を用いた実験を行わなければ,明らかにできないものであり,ヘリカル型の大型装置では初の試みとなります.この成果は,多くの核融合プラズマ研究で必要とされる「加熱分布」から,不確かさを減ずるものであり,LHDにおけるプラズマ物理現象の解明に寄与することが期待されます.

2020年6月15日

水素同位体効果の新たな側面の観測に成功

「水素同位体効果」とは,質量の大きい燃料ガスで生成したプラズマのほうが,温度が上がりやすくなるという現象です.この現象は,重水素と三重水素を燃料として用いる将来のプラズマ核融合炉で,より性能の良いプラズマが生成できることを示唆していますが,その原因は未だ謎に包まれています.大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で,水素同位体効果のこれまでとは異なる側面の観測に成功しました.

2020年2月18日

磁力線の籠の強度低下によるプラズマ温度崩壊のメカニズムを解明

磁場閉じ込め核融合では,高温のプラズマを磁力線で編んだ籠を用いて空間に留めます.プラズマ中に電流が流れると,この籠の強度が低下し,プラズマ温度崩壊と呼ばれる極端な中心プラズマ温度の低下が発生します.プラズマ温度崩壊が起こる際の磁力線とプラズマ温度の振動を詳細に計測し,原因となる波の存在を明らかにしました.この波は,半径方向に2つの節を持つ定在波で,プラズマ中で速度を落としながら周方向に回転します.

2020年1月29日

磁力線の結び目に集中するプラズマの発光を解明

大型ヘリカル装置のプラズマを新たに開発した数値シミュレーションコードによって計算した結果,プラズマの発光がX点とよばれる磁力線の結び目に集中して起こること,およびそのメカニズムが宇宙の星の形成過程で起こっている熱的不安定性と呼ばれる過程と同じメカニズムであることが解明されました.この成果によって将来の核融合装置の磁力線構造を最適化することでプラズマの発光を制御する研究が大きく進展することになります.

2020年1月23日

ミリ波の伝播をリアルタイム制御し,高効率なプラズマ加熱を実現

電子サイクロトロン加熱用のミリ波入射系をリアルタイム制御するシステムを開発し,大型ヘリカル装置(LHD)の時々刻々変化するプラズマに対して最適入射することで,プラズマを高効率加熱できることを示しました.またこの制御系を利用して,高電子温度運転や高密度運転の性能向上に成功しました.この成果は高パワー・長時間運転時の高効率加熱の維持だけでなく,核融合プラズマの性能を評価する輸送研究の高精度化にも貢献します.

2020年1月2日

LHDにおけるミリ波・サブミリ波散乱によるイオン計測

プラズマ中のイオンと高速イオンの状態を調べるために,電磁波の散乱現象を利用した協同トムソン散乱(CTS)計測の開発を進めています.世界初のサブミリ波である300 GHz帯の散乱計測の開発状況を報告しました.また,世界に先駆け深層学習を用いて1次元の計測した散乱信号から2次元の非等方イオン速度分布を求める速度空間上のトモグラフィ手法を提案しました.この成果は,核融合で発生するα粒子の状態を調べる手法の進展に貢献しています.

2019年12月26日

LHDを利用した各種元素からの発光スペクトルの実験データベース構築

大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ中に,原子番号36から83の範囲の各種元素を不純物として入射し,プラズマからの発光を分光器で観測しました.その結果,スペクトルの原子番号や電子温度に対する依存性が系統的に整理され,理論計算との比較による解析が進展し,新たなスペクトル線も発見されました.本研究により,核融合のみならず原子物理学やプラズマ応用の分野でも有用な実験データベースが整備されました.

2019年12月

トレーサーで探る水素同位体のゆくえ

大型ヘリカル装置(LHD)の重水素実験で生成される極僅かの三重水素をトレーサー(追跡子)として利用することで,実験装置の水素同位体挙動を明らかにすることができました.さらに,装置内壁から放出される三重水素は,水素同位体交換反応と材料中の拡散現象に律速されていることを明らかにしました.この成果は,将来の核融合炉で燃料として使用される三重水素の安全取り扱い,燃料循環システムに関する貴重な知見となります.

2019年10月24日

プラズマの磁気島内部に浸透する乱流

核融合科学究所の大型ヘリカル装置(LHD)で考案した「瞬時加熱伝播法」を米国のトカマク装置(ダブレットIII-D)に応用し,米国の共同研究者と共に,乱流が磁気島内部に伝播するという現象を観測しました.核融合を目指した磁場閉じ込めプラズマでは,温度・密度の上昇に伴い乱流が発生することはよく知られていますが,この乱流が伝播するという性質を持つことを初めて実験で発見しました.