あ行
アークジェット
Arc Jet : アークは放電により電極材料の一部が蒸発して気体になった状態。アークジェットはアークが噴流状になったもの。
アスペクト比 (参照:CHS、ヘリオトロンE)
Aspect Ratio : トーラス状プラズマをドーナツに例えたとき、ドーナツの輸の半径を大半径(R)又は主半径、ドーナツの太さを表す半径を小半径(a)、それらの比(R/a)をアスペクト比と呼ぶ。アスペクト比はプラズマの太さ(の逆)を表現する指標である。核融合の研究では、ドーナツの輸の大きさが装置全体の大きさを決めるため、アスペクト比を小さくすることにより、同じ装置の大きさに対してより大きな体積のプラズマを作るための努力が払われてきた。 一方、プラズマの太さ(小半径)を一定とすると、アスペクト比が小さいさいということはドーナツの曲がり(トーラス効果)が大きいことを意味する。トーラス効果がもたらすプラズマ閉じ込め上の損得が、数多くの磁場閉じ込めに関するプラズマ物理研究の源泉になっていたともいえる。
アルヴェン固有モード
Alfven Eigen Mode : プラズマ中で、MHDで記述される磁力線方向に伝搬する横波をシア・アルヴェン波、もしくはその伝搬モードに着目してシア・アルヴェンモードといい、その分散式は、ω=kvで与えられる。ここで、ωは波の角周波数、kは磁力線方向の波数、vはアルヴェン速度である。円筒プラズマでは、磁力線方向の波数kは磁気面方向(半径方向)に連続的に変わり得るので、シア・アルヴェンモードは連続スペクトルを持つ。
しかし、円筒プラズマをトーラス状に変形すると、平衡量がポロイダル角依存性を持つため、円筒プラズマでは独立であった個々のシア・アルヴェンモードの間にポロイダルモード結合が生じ、その結果として、連続スペクトル中に波が立たないスペクトルギャップが生.ずる。このギャップ中に存在する離散モードのことを(シア)アルヴェン固有モードと呼ぶ。
アルファ粒子
Alpha (α) Particle : ヘリウム4(4He)の原子核。重水素(D)-三重水素(T)及び重水素(D)-ヘリウム(3He)核融合反応では、それぞれ3.52MeV, 3.67MeVの高エネルギーアルファ粒子が発生する。アルファ粒子は荷電粒子であり、クーロン衝突によりプラズマを加熱することができるので、アルファ粒子の閉じ込めの良否は着火条件に大きな影響を与える。
イオンバーンシュタイン波加熱 (参照:ICRF)
Ion Bernstein Wave Heating : イオンサイクロトロン周波数帯(ICRF)の加熱方法のうちでイオンバーンシュタイン波(静電波の一種)を使った加熱をいう。開発途上の加熱方法であるが、導波管アンテナの使用が容易である等の利点があり注目されている。最近、イオンバーンシュタイン波加熱時にプラズマ中心領域で閉じ込め改善が見られることが報告されている。
イーサネット
Ethemet : UNlXシステムでよく用いられる情報通信のための媒体で、毎秒10メガビットの情報転送能力を持つ共有同軸ケーブル。イーサネットを用いた通信方式は国際標準化が進んでおり、多くのワークステーションにイーサネット接続用のポート(端末)が装備されている。
ηiモード(イータアイ・モード)
プラズマにおける無衝突静電的ドリフト波不安定性の一種により引き起こされるモードである。イオン温度の空間的勾配により駆動され、イオン温度勾配と密度勾配の比で定義されるパラメータ ηiがある臨界値を超えると不安定となる。プラズマの異常輸送を引き起こす不安定性の一つとして多くの理論解析が行われている。
Hモード(エイチモード)
トカマクプラズマを大電力の中性粒子入射や高周波によって加熱した場合、通常は加熱電力の増加とともに閉じ込め性能が劣化しプラズマの蓄積エネルギーが効率良く増加しなくなる。この閉じ込め形態をLモード(Low Confinement Mode)という。一方、ダイバータ配位の運転、容器壁の放電洗浄や酸素膜コーティングなどによってプラズマ周辺の中性粒子量をできるだけ少なく抑えるとともに、加熱電力を一層増加させると、Hモード(High confinement Mode)と呼ばれる閉じ込め形態が実現する。
この状態では、プラズマの温度や密度の空間分布が極めて平坦になり、エネルギー閉じ込め時間がLモードに比べ最大4倍近くも改善される。現在、Hモードはトカマク型核融合炉の有望な運転モードの一つと考えられている。
エディター
Editor : コンピュータやワープロを用いて行う文章編集のためのソフトウェア。コンピュータやワープロの種類、又は作成すべき文章(プログラム)によって様々なエディターが開発されている。
Lモード(エルモード)
Hモード参照。
エントロピー
Entropy : 物質や場からなる物質系の状態量の一つで、系の内部状態の複雑さの目安を与える。また、情報理論において、情報量を定義するためにエントロピーが用いられる。
オープンダイバータ配位
Open divertor configuration : ダイバータ配位参照。
オーミック閉じ込めモード
Ohmic Confinement Mode : トカマクプラズマはプラズマ電流の作る磁場によって閉じ込められるとともに、その電流によって加熱(オーミック加熱という)される。このオーミック加熱で生成されたプラズマの閉じ込め時間は、電子密度に比例して増加するが、ある密度以上では飽和して増加が止まる。このような閉じ込め形態を、オーミック閉じ込めモードと呼ぶ。改善オーミック閉じ込めモード(IOCモード:Improved Ohmic Confinement Mode)では、閉じ込め時間が密度に対し飽和する現象が解消され、閉じ込めが改善される。
オーロラアーク
Aurora Arc : 太陽から放出された高エネルギー荷電粒子が、地球の磁極付近の上層大気中の酸素や窒素の原子、分子及びそれらのイオンに衝突したときに発生する発光現象をオーロラと呼ぴ、緯度が70度付近の細長い帯状の領域で見られる。人工衛星から見ると発光領域がアーチ状をしているためオーロラアークとも呼ばれる。
か行
回転変換(参照:磁気シア)
Rotational Transform : トーラス状の磁場閉じ込め装置において、プラズマの平衡を保持するためには、トロイダル磁場に加えてポロイダル磁場が必要である。この結果、磁力線がトロイダル方向に1周したときにポロイダル方向にある角度回転する。これを回転変換という。また、その角度を回転変換角と呼ぶ。
単純なトロイダル磁場のみでは、電子とイオンが上下方向に分極し、その結果生ずる電場によるE×Bドリフト(E:上下方向の電場、B:トロイダル方向の磁場)でプラズマが主半径方向に逃げていく。すなわち、平衡がとれない。上下に別れた電荷を中和するために回転変換が必要である。トカマクではプラズマ電流によってポロイダル磁場を生成するが、ヘリカル系では外部コイルのみによって平衡に必要な磁場を生成する。ある磁気面上の磁力線がトロイダル方向にn回転、ポロイダル方向にm回転(m,nは整数)して元の位置に戻るとき、その面をm/nの有理面という。
ガウスビーム
Gauss Beam : マイクロ波やレーザ等のビームの空中伝送に際して、振幅の空間分布がガウス分布をしているビームのことをいう。
カオス
Chaos : 決定論的な方程式に従う系において見られる時間的に不規則で乱雑な挙動のうち、特に、自由度が低い系での不規則運動のことをカオスと呼ぶ。自由度1の系においてもカオスは存在する。
核融合三重積
イオン密度(n)、エネルギー閉じ込め時間(τE)、及び、イオン温度(Ti)の積のことをいう。核融合炉中のプラズマのエネルギー収支を考えると、核融合三重積が十分大きいとき、現実的な発電効率での核融合反応が可能となることが分かる。したがって、核融合三重積の大きさは、核融合反応炉への指標として大きな意味を持つ。単位体積、単位時間のエネルギー生成とプラズマに吸収された外部エネルギーが釣り合う条件を臨界条件と呼ぶ。このために、イオン密度1020m-3、エネルギー閉じ込め時間1秒、イオン温度10keV(約1億度)から得られる値1×1021m-3seckeVが核融合三重積の目標となる。
ガスパフ法(参照:ペレット入射)
Gas Puff : プラズマの粒子は拡散や対流により閉じ込め領域から失われるため、粒子閉じ込め時間は有限で、この時間スケールで粒子は減少する。したがって、粒子数についての定常状態を維持するためには、外部から粒子を補給する必要がある。最も簡便な方法として、プラズマに向かって中性の燃料ガスを必要一量吹き付ける方法が考えられる。これをガスパフ法と呼び、広く用いられている。この方法の欠点は、プラズマ周辺部での中性粒子数が必然的に多くなり、エネルギー閉じ込め劣化の一因となることである。
荷電交換分光(CXS)
Charge eXchane Spectroscopy : 高速の中性粒子ビームをプラズマ中に入射すると、プラズマ中の完全電離イオンとの荷電交換反応により、電離状態が一価下がったイオンが作られる。そのイオンからの光の輻射を利用して完全電離イオンの温度、速度、密度を測る方法を荷電交換分光と呼ぶ。
還流エネルギー
核融合炉でのエネルギーの流れを考えたとき、核融合反応によって生じた熱エネルギーの一部は、外部に出力されることなく炉システム内に戻され、核反応を持続させるための閉じ込め磁場の維持、電流駆動、燃料の制御などのために消費される。これを還流エネルギーという。ヘリカルシステムの場合、トロイダル電流の維持(電流駆動のためのエネルギー)は本質的に必要ないので、トカマクと比べた場合、還流エネルギーが少ないといえる。
強制冷却(同義:強制流動冷却、参照:浸漬冷却)
Forced Cooling : 超伝導コイルを構成する超伝導導体をその臨界温度以下に冷却維持するための冷却方法の1つ。ガス状冷媒、液状冷媒のいかんを問わず圧力をかけるなどによってコイル内部に冷媒を強制的に循環させる方法で、浸漬冷却が沸騰を前提にすることと異なり、多くの場合冷媒の顕熱上昇によって導体を冷却する。
また一時的な沸騰を生じても冷媒蒸気を液とともに強制的にコイルの外へ排出できる。このように冷却の機構をコイル外部から積極的に制御できることが強制冷却の特徴である。LHD用ポロイダルコイルのように交番励磁され、導体自身の発熱が避けられない超伝導コイルの冷却では、ポンプなどをもちいてコイルを構成する超伝導導体の内部に直接ヘリウムを流動させる。またヘリウムも沸騰を生じない超臨界域の圧力と温度の範囲で使用される。
クエンチ現象(参照:超伝導コイル、NbTi)
Quench : 超伝導コイルに用いられるNbTiなどの超伝導線がその臨界値(電流密度、臨界温度、臨界磁場)を上回って使用されると、超伝導状態が保たれず、高い電気抵抗をもった不良導体に変わる。これは常伝導転移と呼ばれる。
転移が起きるとそれまで超伝導コイルを電気抵抗ゼロで流れていた電流が一気にせき止められ、電気エネルギーは転移した部分で熱に変わりその部分を高い温度に加熱する。さらにコイル内のヘリウムも加熱されるので温度とともに圧力も上昇する。超伝導コイルの項に述べたように、実際にはコイルをそのような限度に至る前に、転移を制御して再び超伝導状態に復帰できるようにいろいろな角度からの設計検討と周到な運転手法が採用されている。安定化材や素線の配分設計などを始めとする、導体の冷却安定化設計がそれである。
しかし予期せぬ何らかの熱的擾乱によって常伝導転移部分が発展的に成長し、超伝導への再復帰が不可能な範囲にまで広がる事態も当然予想しておかねばならない。クエンチ現象とはこの状態を指している。大型超伝導コイルではコイルの蓄積エネルギーも大きいので、クエンチ発生に際しては機器を損なわずに、かつ安全に運転を停止することが必須となる。その目的のための多くの保護・安全技術は既に確立され、実証された方法が採用される。例えば蓄積エネルギーのほとんどすべてをコイルの外にある常温度の抵抗体へ迅速、安全に放出するとともに、その際の回路保護協調、コイル温度上昇、さらにはヘリウム冷媒の処置、などがクエンチ現象の検出技術とともに周到に吟味したうえで採用される。
クライオパネル
Cryopanel : 液体ヘリウムを使った大容量の排気速度をもつ排気装置。中性粒子加熱装置等によく使われる。
グラファイト試料
Graphite Sample : 高温で処理された炭素(グラファイト)材料は、一般的に強度、熱伝導度などに優れた性質を持つ。この性質を生かして、最近のトーラス型閉じ込め装置では、プラズマからの粒子や高エネルギーの中性粒子が直接衝突するプラズマ対向壁(第一壁、ダイバータ板)にはグラファイトが用いられることが多い。これによって、プラズマ閉じ込めにおいて好ましくない金属不純物の発生を避けている。グラファイトには多くの種類があり、それぞれに特長があるため、多種類のグラファイトを試料として熱衝撃試験などを行い、目的に応じた適用が考えられている。
グラフィック・ラボ(参照:シミュレーション・ラボ)
Graphic Laboratory : シミュレーション結果を解析するための実験室。スーパーコンピュータによって得られた膨大な計算データを、スーパーコンピュータと高速接続された周辺機器(グラフイック・ワークステーション、画像編集装置、画像出力装置等)を用いて可視化データヘの変換、画像編集、画像出力等の作業を行う。
また、必要に応じて画像表現法の研究や画像処理用ソフトウェアの開発もこの実験室で行われる。
クーロン散乱(クーロン衝突)(参照:新古典理論)
Coulomb Collision : 荷電粒子はクーロンカと呼ばれる遠距離力により他の荷電粒子と相互作用を行う。この相互作用のため、プラズマ中を進む荷電粒子は他の荷電粒子に接近するたびにその進路方向を変えることになる。この物理現象をクーロン散乱と呼ぶ。
径電場分岐理論
Hモードが発生する時には「遷移」と呼ばれるように、プラズマ表面からの損失が急速に変化する。その原理的理解のために提案された径電場分岐理論の描像では、輸送係数は径電場に依存するが、径電場はプラズマの流れによって影響されるため、径電場が弱い状態(L)と正または負の強い状態(H±)の間をカタストロフィ現象のように飛び移る。この理論的予言に対し、実験では速い電場の変化が認められ、この描像はL/H遷移を考える中心的作業仮説となっている。
高速磁気面制御(参照:ポロイダル)
ヘリカル型磁場配位(磁気容器、磁気面)はヘリカルコイル電流とポロイダルコイル電流の作る磁場によって構成される。磁気容器の概略はヘリカルコイルと外側垂直磁場コイル(ポロイダルコイルの一種)によって決まる。これらのコイルは通常、直流通電される。細かい調整、例えば、磁気容器を主半径方向にシフトさせることや磁気面の形をより楕円にしたりあるいは円形に近づけたりすることは、他のポロイダルコイル電流の制御により行う。これらの制御をプラズマパラメータの時間変化(加熱による高べータ化など)に合わせて高速で行うことを、高速磁気面制御という。
高べータ
High β : べータ値参照。
コルゲート導波管(参照:ECH)
Corrugated Wave Guide : マイクロ波導波管の一種で、伝送損失を軽減する目的で導波管内に周期一定のコルゲート(うねり)を施したものをいう。
さ行
三次元有限要素モデルジェネレーター
Pro/ENGINEERのオプションソフトの一種でPro/MESHという商品名で呼ばれている。Pro/ENGINEERで作成された構造物モデルに対して、有限要素法(FEM)を用いて構造や熱の解析を行うための解析モデルを作るために、自動的に三次元有限要素(要素及び節点)を作成する。この要素として、三角形シェル(板)、四面体ソリッド、ビーム(棒)を選択できる。また、これらの有限要素に荷重、熱、境界条件を付加することもできる。ANSYS, NASTRAN, PATRAN等ソルバーの解析ソフト用のファイルを作成する機能も持っている。
磁気井戸
Magnetic Well : 磁力線の曲率がプラズマ圧力勾配と反対向きの成分を持っているとき、良い曲率と呼ばれ、逆の場合には悪い曲率と呼ばれる。平均的に良い曲率を持つ磁気面では、磁気面平均した磁場が小半径方向外側に向かって強くなる。このような磁気面の領域を磁気井戸という。一般にプラズマの圧力勾配は小半径方向の内側を向いている。そのため磁気井戸の中では、隣接する磁気面間で磁力管が交換するような摂動が存在しても、この摂動はプラズマの持つポテンシャルエネルギーを増加させるので成長することができない。すなわち、磁気井戸は交換型不安定性に対して安定化の寄与がある。
逆に、磁力線が平均的に悪い曲率を持っている領域を磁気丘と呼び、交換型モードに対して不安定化の効果を持つ。
磁気丘
Magnetic Hill : 磁気井戸参照。
磁気シア(参照:回転変換)
Magnetic Shear : 磁力線がトロイダル方向に1周したときにポロイダル方向に回転する回転変換角が磁気面ごとに異なるとき、この磁場配位は磁気シアを持つという。MHD安定性の観点からすると、磁気シアがあれば、不安定性の共鳴面から離れるにつれて安定なアルベン波のエネルギーが大きくなるため、不安定性を安定化する働きがある。
磁気島(参照:回転変換、ローカルアイランドダイバータ)
Magnetic Island : 円形や楕円形の切り口をした磁気面が入れ子状になっているトーラス閉じ込め磁場配位において、それらの磁気面の間にできる三日月状の孤立した島のような磁気面のことをいう。有理面に共鳴する成分を持つ不整磁場を印加すると形成される。磁場閉じ込め装置は不整磁場が極力少なくなるように設計、製作される。しかし、ローカルアイランドダイバータのように不整磁場発生用のコイルを巻いて磁気島を故意に作る場合もある。
磁気リコネクション
Magnetic Recomection : 磁化プラズマ(磁場が印加されたプラズマ)中で有限な電気抵抗が存在するために、磁力線がつなぎ替わる現象を磁気リコネクションという。プラズマ中に電気抵抗を生み出す原因としては、粒子間衝突によるものとそれ以外のものに大別され、特に後者を異常抵抗と呼んでいる。異常抵抗による磁気リコネクションは、粒子間衝突を伴わないため、無衝突磁気リコネクションとも呼ばれ、これまで様々な物理モデルが提唱されてきているが、最終的な合意に至っていない。また、磁気リコネクションが何らかの外部要因によって駆動された場合(駆動型磁気リコネクション)は、プラズマ内で自発的に起こる場合に比べ、急激な磁気エネルギーの変換や磁力線形状の変化が起こることが知られている。
σ成分(シグマ成分)(参照:モーショナル・シュタルク法)
高速の中性粒子(多くの場合、水素又は重水素)が磁場中を通過する際にはV×B(Vは速度、Bは磁場)の電場を感じエネルギー準位の拡がりを生じる(モーショナル・シュタルク)。この時にプラズマとの衝突で励起されて出てくる光には電場に垂直な偏光成分と電場に平行な偏光成分がある。このうち電場に垂直な偏光成分をσ成分と言う。
自然放射線(環境放射線)
自然環境の中には、常時放射線が存在している。それは、大地(岩石、土壌)中にはウラン、トリウム、カリウム40、大気中にはラドン等の放射性物質が含まれており、また、大気外からは宇宙線の形で高エネルギー粒子が入射してくるからである。そして、これらが時間と場所の関数としての変動を含めてバックグラウンド放射線強度を与えている。
実時間OS
コンピューターシステムが、システム外部から入力された情報に対して、実世界の出来事(外部からの事象)に合わせて、システム外部に時間的な待ち合わせをさせることなしに、ある決められた時間的規制の範囲内に処理、応答するための計算機のオペレーションシステムのこと。
磁場反転配位(FRC)
Field Reversed Configuration : トロイダル・プラズマ電流によるポロイダル磁場と外部コイルによる縦方向磁場によってプラズマを閉じ込める配位。トカマク等に比べてトロイダル磁場がないために非常に高べータ(90%以上)のプラズマを安定に閉じ込めることができる。また周辺が開いた磁力線で囲まれているために核融合反応生成荷電粒子のエネルギーを直接エネルギー変換器を使って高効率で電気エネルギーに変換できる。D-3He等のいわゆるアドヴァンスド燃料核融合に最適な配位として注目されている。
磁場リップル(参照:捕捉粒子)
Magnetic Field Ripple : 磁場閉じ込め核融合においては、磁場を用いてプラズマを閉じ込める。ヘリカル系では、この磁場はプラズマ外部に設置されたヘリカルコイルなどに流れる電流によって作られる。外部コイルはプラズマ全体を被い尽くすものではないから、コイルの近くでは、磁場強度が強く、コイルとコイルの間では、磁場強度が弱い、というように磁場強度に強弱が生じる。磁力線に沿っての磁場強度の強弱の波を磁場リップルと呼ぶ。トカマクの場合も、有限個のトロイダルコイルを用いて磁場を作るので、コイル直下では磁場が強くコイル間では弱いというように、磁場リップルが生ずる。リップルとは、さざ波のことであり、磁場強度に立つさざ波(磁場強度のわずかな変動)をイメージしている。
ジャイロボーム拡散
Gyro Bohm Diffusion : プラズマの粒子や熱の拡散係数の表式として、D=(T/eB) (ρ/L)の形のものをジャイロ・ボーム拡散係数と呼ぶ。ここで、Tはプラズマ温度、Bは磁場の強さ、eは電子の電荷の絶対値で、(T/eB)はボーム拡散係数と呼ばれる。ジャイロ・ボーム拡散係数はボーム拡散係数とプラズマ・イオンの旋回(ジャイロ)半径ρとプラズマの密度や温度の空間変化のスケール長Lの比(ρ/L)との積の形をしており、この名称で呼ばれる。ジャイロ・ボーム拡散係数は、理論的には、短波長の無衝突ドリフト波乱流の次元解析より求められる。プラズマがボーム拡散とジャイロ・ボーム拡散とのどちらで拡散していくかについて関心が集まっており、それを調べるためにいくつかの実験が行われている。
重イオンビームプローブ(HIBP)(参照:プローブビーム)
Heavy lon Beam Probing : 数十万ボルトから数百万ボルトにまで加速したセシウム、タリウムなどの重イオンビームをプラズマ中に入射して、プラズマ中の電位分布などを測定する計測器。重イオンを用いる理由は、数テスラの閉じ込め磁場中でのラーモア半径が閉じ込め装置の寸法程度となり、測定上都合がよいからである。入射前の重イオン(通常一価)のエネルギーとプラズマ通過中に二価になった後のエネルギーの差を測定する。エネルギー差がピームが通過した位置でのプラズマの電位を与える。
シミュレーション・ラボ(参照:グラフィック・ラボ)
Simulation Laboratory : スーパーコンピュータを用いた計算機シミュレーションのためのシミュレーション・モデルの構築、計算機プログラムの作成、プログラムの実行、結果の解析・検討といった一連の研究活動を行うための実験室。スーパーコンピュータと高速接続されたワークステーション群が配置されている。
シャフラノフシフト
Shafranov Shift : ヘリカル系やトカマクのような環状系(トーラス系)の装置では、プラズマの圧力の増大に伴いプラズマをトーラス外側(主半径方向)へ押し出そうとする力が強くなり、トーラス外側へのプラズマの移動(シフト)が生ずる。このシフトのことをシャフラノフシフトと呼ぶ。ロシアのシャフラノフ博士によって定式化された。トカマクでは、ヘリカル系とは異なり、プラズマ内部に電流を流す。この電流によるフープ力もシャフラノフシフトの一因となる。
周辺局所モード(ELM)
Edge Localized Mode : ELMy-Hモード参照。
新古典理論又は新古典輸送理論(参照:プラズマ輸送)
Neoclassical (Transport) Theory : プラズマ中の電子やイオンは磁力線の周りを回転運動する。さらに、この回転の中心(案内中心)は、磁力線を横切る方向にわずかなドリフトを伴いながら磁力線方向に運動している。まず、この回転運動に対するクーロン衝突の影響を考える。この場合の拡散は、回転半径をρとして、衝突周波数νで、歩幅ρのランダムウォークと考えられるから、拡散係数D=νρ2を得る。
このような拡散を古典拡散と呼ぶ。次に、案内中心に対するクーロン衝突の影響を考える。磁力線方向の速度の小さい粒子の場合、案内中心は磁場強度の強い領域で跳ね返されてしまい、その案内中心は磁力線に沿って往復運動を示すことになる。このような粒子を捕捉粒子と呼ぶ。磁力線を横切るドリフトのために捕捉粒子の案内中心の往復運動は、磁気面方向に幅△を持ち、その軌道の形状から、バナナ運動と呼ばれる。この幅△は、回転半径ρと比較して十分大きく、捕捉粒子の割合、実効的な衝突周波数を考慮して求めた拡散係数は古典拡散の場合より大きくなる。このように、案内中心の動きに対するクーロン衝突の効果を考慮する線形輸送理論を新古典理論と呼ぶ。
浸漬冷却(同義:プール沸騰冷却、参照:強制冷却)
超伝導コイルを構成する超伝導導体をその臨界温度以下に冷却維持するための冷却方法の一つ。浸漬冷却はコイル全体を液体ヘリウム槽に浸して冷却する。その冷却機構は沸騰熱伝達であり、そのため冷却性能が高いこと、コイル全体を均一な温度に冷却できること、また冷媒が飽和液のためその温度制御や冷却システムの設計・運転も容易であることなどの特徴がある。
反面、沸騰により発生する気体ヘリウムは冷却面から速やかに排除され周囲の液と入れ替わる必要があり、この性能はコイル中での自然循環の強さに支配される。このため、LHD用ヘリカルコイルなど、直流励磁で原則的に超伝導コイル自身の発熱がない場合に最も多く採用される。
スケーリング則(参照:LHD則、ジャイロボーム拡散)
Scaling Law : ある変数を他の幾つかの変数のべき乗の積の形で表した関係式あるいは法則のこと。特に核融合プラズマのエネルギー閉じ込め時間をプラズマ半径、密度、温度、磁場や入カパワー等のパラメータのべき乗の積として表した半経験則を指す。ヘリカル型装置のエネルギー閉じ込め時間に対する経験則としてはLHD則があるが、これはドリフト波乱流の理論から得られるジャイロ・ボーム・スケーリングとほとんど一致する。
ステラレーター(参照:ヘリカル形状)
Stellarator : 米国プリンストン大学のスピッツアー博士が提唱した閉じ込め磁場配位の一つ。
プラズマ中に電流を流さないで、外部に巻いたコイルに流れる電流のみが作る磁場で、プラズマを閉じ込める方式が当時(1950年代)模索されていたが、最初のアイディアはプラズマ閉じ込め容器が立体的な8の字になった8の字ステラレーターであった。これが発展してドーナツ型.の閉じ込め容器の周りにヘリカルコイルを巻いたステラレーターとなった。ヘリカルコイルによる閉じ込め磁場配位は必然的にプラズマ断面が楕円又はおむすび形になる。楕円断面の場合、ステラレーターでは4本のヘリカルコイルに互い違いに電流を流すが、ヘリオトロンやトルサトロンでは2本のヘリカルコイルに同じ向きの電流を流す。
スフェロマック
Spheromak : コンパクト・トーラスと呼ばれる、中心構造体(トロイダルコイル等)を持たないトーラス系の磁場閉じ込め方式の一つである。その特徴として、構造が簡単なため、プラズマの中心軸に沿っての移動が容易となり、プラズマの生成領域と閉じ込め領域を分離することができることがあげられる。また、コンパクト・トーラスのもう一つの閉じ込め方式である逆転磁場配位(FRC)と異なり、ポロイダル磁場とトロイダル磁場の両成分を持ち、平衡配位はほぼ無力磁場配位で与えられる。
ゼーマン効果
Zeeman Effect : 原子などが発光するとき、磁場がないときには単一の波長の光だったものが、磁場中では異なった数種類の波長の光に分かれる現象をいう。この光を観測することにより、磁場の情報が得られる。
絶縁ブレーク構造
トカマク装置では、燃料ガスを充填したドーナツ状の真空容器の大円周方向(トロイダル方向)に変圧器の原理によって数十ボルトの電圧を加えてプラズマを発生させるとともにプラズマ中に電流を流す。壁面からの不純物ガスの発生を防止するため、真空容器は通常ステンレス鋼で製作される。真空容器の大円周方向の電気抵抗が小さすぎると加えた電圧によって容器にのみ電流が流れてしまい、有効に燃料ガスやプラズマに電圧を加えることができない。これを防ぐため、真空容器を大円周方向で・分割し電気的に絶縁する。このような分割構造を絶縁ブレーク構造と呼ぶ。真空漏れを起こさず、しかも不純物ガスの放出の少ない特殊な絶縁物が使われる。
た行
体積生成負イオン源
次世代の高速中性粒子入射装置で必要とされる水素同位体の負イオンを、高効率に生成するためのイオン源の一つとして、負イオンの体積生成過程を利用したイオン源である。体積生成過程とは、中性分子が高速電子(数十eV)との衝突により振動励起状態に遷移し、これと熱電子(1eV程度)とが解離性付着し、負イオンができる過程である。この際、高速電子との衝突により負イオンが破壊されるのを防ぐため、これらの過程が起こる領域を磁気フィルター等により分離する必要がある。
ダイナモ過程
Dynamo Theory : 磁気流体が磁場の中を運動すると電磁誘導により流体中に電流が生まれる。
この過程で生み出された電流は磁場を作るため、もとの磁場は更に強くなる。一方、磁場を作っている電流は電気抵抗により滅衰していく。そのため、磁気流体の運動を駆動する外部からのエネルギー供給が、電気抵抗による減衰とつりあったところで、磁場構造が維持されるものと考えられる。このようにして、地球、太陽、銀河等の大きな空間スケールでの磁場の維持機構を説明したものがダイナモ理論である。
ダイバータ配位(参照:リサイクリング)
divertor Configuration : 閉じ込め磁場構造に工夫を加え、プラズマを閉じ込める「閉じ込め領域」とダイバータ板につながる「開いた領域」とを分離する磁場配位を「ダイバータ配位」と呼ぶ。2つの領域の境界面には、X点(ヌル点)が必ず1つは存在し、その境界面上の磁力線は、X点近傍を通過して閉じ込め領域周辺から離れて、ダイバータ板のある空聞に達する。
X点を2つ有するダイバータ配位を「ダブルヌル」配位と呼ぶ。開いた領域は、プラズマ外部(第一壁など)で発生した不純物を電離しダイバータ板に導.くことにより、不純物の閉じ込め領域への混入を防ぐ役目を持っている。さらに、閉じ込め領域から流れ出した粒子がダイバータ板で中性の粒子になるが、この中性粒子に対しても不純物に対するのと同じく遮蔽の効果を持ち、プラズマ周辺における中性粒子密度の低減に役立つ。LHDやヘリオトロンE,
CHSのようなヘリカル型では、ダイバータ配位は自然に備わっていて、トカマクのようにダイバータコイルを設置する必要がない。
ダイバータ板と「閉じ込め領域」との聞に「バッフル板」(遮蔽板)を置かない単純なダイバータ配位を、「オープンダイバータ配位」と呼ぶ。ダイバータ板の周りの領域をバッフル板で覆うことにより、「閉じたダイバータ室」を形成する配位を「閉じたダイバータ配位」という。この配位では、ダイバータ板でリサイクルした燃料中性粒子や発生、した不純物中性粒子が閉じ込め領域に混入するのを最少限にくいとめることができる。
タービュレンス
Turbulene : 擾乱、乱流などと訳し、プラズマそのものの振動やプラズマ中での電場や磁場の振動などがその実体である。これがプラズマの閉じ込めを悪化させる場合が多いので、この物理機構の解明が重要な研究課題となっている。
ダブルヌル
Double Null : ダイバータ配位参照。
ダブルレイヤ
Double Layer : 磁化プラズマ中で、磁力線方向にプラズマ流が存在するときに発生する現象で、磁力線に沿った方向に急峻な傾きを持つ静電ポテンシャルの空間構造(階段状構造)が形成される。この静電ポテンシャルのギャップを挟んだ狭い領域に、電子とイオンに荷電分離された薄い層が現れるため、電気二重層(ダブルレイヤ)と呼ばれる。この現象は、実験室プラズマから宇宙プラズマまでの広範なプラズマに現れることが知られている。
超多重並列計算機
演算を単一プロセッサだけで行う従来のタイプの計算機に対し、複数個の演算プロセッサを用いて、同時に並列処理することにより、演算効率を上げることのできる計算機が作られるようになってきた。このような計算機を並列計算機と呼ぶ。各要素プロセッサ間のデータ転送、データ周期、負荷分散などの性能を向上させることにより、数百から数千もの演算プロセッサで構成される超多重並列計算機の開発が可能となってきた。
超伝導コイル(同意語:超電導コイル、超伝導マグネット 対義語:常伝導コイル)
Super Conducting Coil : 銅のような電気の良導体でも電気抵抗があって、電圧をかけないと電流が流れない。しかしある種の固体物質ではある臨界温度以下に冷やすと電気抵抗がなくなり、一度電流を流すと電圧をかけなくても電流が流れ続ける。このような物質をコイル状に巻いて電磁石をつくると電気抵抗による発熱がないので通常の電磁石より高い電流密度をもつものをコンパクトに作ることができる。
こうして作られた電磁石を超伝導コイル、それに対し通常のものを常伝導コイルという。核融合炉では、高温高密度プラズマの閉じ込めのためにコイルには高磁場を発生することが求められ、同時にコイルをプラズマに極力接近させるうえでコンパクトさも必要である。このためLHDでは超伝導コイルが採用される。超伝導物質を超伝導状態に保つには温度、電流密度、環境磁場の3者がいずれもある臨界値以下でなければならず、1つでも臨界値を超えると常伝導に転移する。その際の局部発熱を制御するために超伝導物質は電気抵抗の低い、また熱伝導の良い純銅など(安定化材と呼ばれる)とともに使用される。
超伝導コイルの構成と製作の一例をつぎに述べる。まず超伝導物質と安定化材を重ねあわせたのち、極めて細い素線(直径が〜数十ミクロン程度)にまで抽伸し、必要な本数だけ束ねたフィラメント(〜1mm)を数本ごとに多重に撚り合わせてストランド(〜数mm)として成形する。これは素線のレベルまで一様に臨界温度以下に冷えるような冷却の徹底化と常伝導転移時の発熱の分散化を図るためである。
さらに所定の電流値が得られるだけの本数のストランドが撚り束ねられ、最後にムクの安定化材製ワイヤと抱き合わせてシースと呼ばれる管に収納される。超伝導コイルはこの段階のケーブル(導体)を所定の磁場強度を発生するように線輪状に巻きあげて作られる。
超伝導バスライン
Super Conductiing BusLine : バスラインは電源とコイルをつなぐ送電ラインを指す。超伝導コイルの大型化・大電流化に伴い、大型電源や常伝導の大口径バスラインをコイル近くに設置することは場所の制約から困難となる。このため、電源機器を離れた位置に設置して超伝導コイルとの間を超伝導送電ライン(超伝導バスライン)で接続すると超伝導バスライン自体は小口径でよいので好都合である。さらに将来の商用核融合炉においては、コイルを超伝導バスラインを経て永久電流スイッチと結合することでコイルヘの供総電カゼロで炉を連続運転することも可能となる。このために超伝導バスラインには高い信頼性と安全性が求められ、当研究所ではこれらを研究課題として高安定なアルミニウム安定化超伝導成型撚線を用い、バスラインの全長をヘリウムで冷却する超伝導バスラインの研究開発を行っている。製作と試験がすべて工場内で実施でき、またリールでの輸送も可能なようにフレキシブルなユニット構造が望ましい。当研究所では既に超伝導成型撚線を同心多重でかつ可擦式の真空断熱配管に組み込んだ長さ20mの試作機を製作し、その冷却・通電実験を行ってその高い安定性を確認している。
超伝導マグネット
Super Conducting Magnet : 超伝導コイル参照
抵抗性交換型モード
Resistive Interchange Mode : 圧力駆動型モードのうち、磁力線に沿って共鳴面の両側の磁力管が交換するように成長するモードを交換型モードと呼ぶ。プラズマ中の電気抵抗の効果を考慮に入れると、共鳴面近傍では磁場の拡散の効果のために磁気シアの安定化効果が弱められる。したがって、抵抗性交換型モードは、プラズマの電気抵抗を考えない理想交換型モードに比べて不安定になりやすい。
テキストール(TEXTOR)
Torus EXperiment on Technology Oriented Research : ドイツのユーリッヒ研究所で稼働している主半径175cm、小半径48cm、トロイダル磁場2テスラの中型トカマク装置。核融合炉で問題となるプラズマ壁相互作用に関連した課題(たとえば、壁材料の開発、不純物や粒子制御、壁材料の損耗など)を重点に、国際協力をべースに研究を進めることを目的として製作された。日本からも研究チームが参加し研究を進めている。いままでにこの装置において、金属不純物の混入を抑制するため容器内の炭素や棚素膜によるコーティング法が開発され、世界各国のプラズマ発生装置で採用されている。
デバッグ・ツール
計算機言語で書かれたプログラムの文法上の誤りを、コンピュータやワークステーションを用いて調べるために開発された計算機ソフトウェア。
電子サイクロトロン幅射計測
電離及び非電離放射線
通常の放射線(X線、高速粒子線等)は、物質内で電離能力を持ち、電離放射線と呼ばれる。一方、直接の電離作用を伴わない磁場、電場、電波、光、レーザー、超音波等についても熱作用や生体影響等の効果が近年注目されるようになり、これらは防護の対象として非電離放射線と名付けられている。
電流駆動
Current Drive : トカマクの定常運転をするためには、プラズマ中に平衡を維持するための電流を定常的に流さなければならない。オーミック電流は電磁誘導の原理を用いており定常電流にはなりえないので、別の方法で電流を駆動する必要がある。これを電流駆動と呼ぶ。電流駆動の方法としては低域混成波を用いた低域混成波電流駆動がよく知られているが、密度限界等の問題点があって核融合炉への適用には問題があるとされている。そこで、このような問題点を解決するために低域混成波の代わりに速波を使った電流駆動が提案されており、これを速波電流駆動という。
電流ディスラプション
Current Disruption : 電流崩壊、主崩壊ともいう。トカマクのように、閉じ込め磁場配位を形成するために、プラズマ中に電流を流す場合、その電流に起因するMHD不安定性.が原因となって平衡が崩れプラズマが消滅することがある。このようなプラズマの消滅につながる崩壊現象を電流ディスラプションと呼ぶ。この場合、プラズマ電流に関連するポロイダル磁場エネルギーが放出され、装置に損傷を与えることがある。また、ブラズマの消滅は伴わないが、プラズマ内部のエネルギーがプラズマ周辺へと吐き出される現象もあって、これを内部崩壊と呼ぶ。
トカマク
Tokamak : 旧ソ連クルチャトフ研究所で提唱されたプラズマ閉じ込めのための磁場配位の一つ。ドーナツ型の容器中のプラズマに電流を流し、その電流が作る磁場でプラズマを閉じ込め、加熱する。プラズマを安定に閉じ込めるために外部コイルを用いてトーラス方向にも強いトロイダル磁場を加える。1960年代の終わりにクルチャトフ研究所がトカマクを用いて当時としては画期的な成果(約1千万度の電子温度)を発表し、それ以降世界各国で活発に研究が進められている。現在稼働中の大型プラズマ実験装置JT-60U(日)、TFTR(米)、JET(欧)は全てこのタイプの装置である。現在、磁場閉じ込め装置の中で最も良いプラズマパラメータを達成している。
閉じたダイバータ室(閉じたダイバータ配位)
Closed divertor Chamber : ダイバータ配位参照。
ドップラー温度
Doppler Temperature : イオンの熱運動(温度に対応したランダムな運動)のために、イオンからのスペクトル線の波長に拡がり(ドップラー拡がり)が生じる。この拡がりを測定することにより求められたイオン温度をドップラー温度という。主に不純物イオンの温度が対象となる。
トポロジー
Topology : 空間の2点の遠近を判定するための数学条件をトポロジー(位相)という。例えば、球体、ドーナツ形状、連鎖形状等の幾何学性質を表すための概念として用いられる。
トモグラフィー法
Tomography : 多数の視線方向の放射計測を行うことにより、物体の内部を三次元的にとらえる方法。
トレーサー粒子
Tracer Particle : プラズマ計測に用いるために注入するプラズマ粒子と異なった性質を持つ粒子。トレーサー粒子の振る舞いを観察することによりプラズマ粒子の運動を測定する。
ドロップレット法
Droplet Method : ペレット入射参照。
な行
2段ガスガン法
Two Stage Gas Gun Method : ペレット入射参照。
は行
バケット型負イオン源
イオン源では一般にビームとして加速するイオンをプラズマ源内でアーク放電により生成している。そのうち、アノードとなる放電室壁外部に永久磁石を配置して線状または点状のカスプ配位磁場で囲むことによりカソードから放出される放電電子を容器内に閉じこめて放電の効率を上げる方式のものをバケット型イオン源という。現在の大型イオン源はほとんどこの方式を採っている。
バッフル板
Baffle Plate : ダイバータ配位参照。
バースト状放射線
プラズマ実験で発生する放射線は、パルス的通電、プラズマの不安定性、高速粒子の生成、器壁等との相互作用等の要素に支配されるので、短時間に集中して突発的に生じることが多い。このようなものをバースト状放射線といい、その細部構造を調べるには、線種、強度、エネルギー、時間などについての十分な分解能を必要とする。
バラメトリックソリッドモデラー
機械構造設計を目的としたコンピュータ設計ツールソフトであるPro/ENGINEER(PARAMETRlCTECHNOLOGY社:米国BOSTON)が形状開発のべースとする三次元CAD機能。この機能は、構造物モデルとしてコンピュータ内での中身の詰まった状態の立体(solid)形状の情報を、空間の絶対的な位置(座標)を意識せずに、形状の各寸法値(長さ、角度、径、距離等)で全て管理し作成することができる。この機能の長所は、設計過程における設計(寸法)変更に対して即座にその構造物のモデル形状を変更できる所にある。また、同時に複数の構造物のモデルの各寸法を、関係式を用いて一元管理することができる。すなわち、構造設計の迅速化、自動化に寄与できる。
パルス
Pulse : 電流や電波が連続的に流れず、一定の短い時聞のみ間欠的に流れるときに、その電流などをパルスという。プラズマ実験装置では、トカマクは電流を常時流し続けることができないので、必然的にパルス運転となる。加熱装置においても、定常的な運転を行わない場合はパルス運転という。
光弾性変調器による偏光分離法
光弾性変調器とはピエゾ素子を結晶に取り付けたもので、高周波電圧を加えて、光の偏光角を時間的に変化させる光学素子である。これを使うことによって楕円偏向から直線偏光と円偏光とを分離し、直線偏光の向きを測定することができる。
非線形相互作用
Nonlinear Interaction : 相互作用が未知数あるいは未知関数の2次以上の項によって表現される場合、それを非線形相互作用という。非線形相互作用を含む方程式の厳密解は、変数分離の方法が適用できる場合を除くと、一般に困難であり、近似解法も試行錯誤による場合が多い。
非電離放射線
電離参照
ファブリーペロー干渉計
Fabry Perot Interferometer : 2枚の平行平面ガラスを平行に置いて、この向かい合った面の間で入射した光の反射を繰り返させるようにして光を干渉させると、ある特定の条件を満たした光のみが良く透過する。これにより精度の良い分光器ができ、ファブリーペロー干渉計と呼ばれる。
フェライト方式(参照:ICRF)
Ferrite Method : イオンサイクロトロン共鳴加熱において整合回路にフェライトを用いるものをいう。可動素子を省略できるので高速応答が得られる。
フォトダイオードアレイ
Photodiode Array : フォトダイオードは半導体に電極を取り付けたもので、光が照射されると電流が発生し、光検出器に用いられる。アレイはこの検出器をたくさん並べたもので光の分布を測定する。
複合複雑系相互作用
核融合プラズマに見られる興味ある現象の多くは、時聞スケール・空間スケールの異なる多種多様な相互作用が競合して生起しているだけでなく、それらの相互作用が非線形性を伴っているために、非常に複雑なものとなっている。このような相互作用を複合複雑系相互作用と呼ぶ。
不純物
Impuritty : 実験的にプラズマを作るには、プラズマを閉じ込めるための容器(真空容器)を超高真空に保ち・ここに燃料中性気体(例えば水素)を注入し、これを電離する。しかしながら、真空容器の壁には、様々の元素が付着・混入しており、これらが、燃料イオンの壁への衝突等ではじき出され、プラズマ中に異種の中性粒子又はイオン(例えば、酸素イオン、炭素イオンなど)として存在することになる。これらの異種中性粒子を不純物、異種イオンを燃料イオンに対して不純物イオンと呼ぶ。不純物、不純物イオンの種類及びプラズマ中への混入率は、壁の材質、プラズマ生成前の壁の状態等に大きく依存する。プラズマ中の不純物イオンは、電子の制動輻射損失等に関連して、エネルギー損失増大の原因となる。また、プラズマの実効的な電荷を引き上げ、MHD平衡、輸送等にも影響を与える。
ブートストラップ電流(参照:磁場リップル)
Bootstrup Current : プラズマ中の電子やイオンは磁力線の周りを回転運動している。さらに、この回転中心(案内中心)は、磁力線を横切る方向にわずかなドリフトを伴いながら磁力線方向に運動している。磁力線方向の速度の大きい粒子の場合、その案内中心は、磁力線に沿って自由に運動できるが、磁力線方向の速度の小さい粒子の場合は、磁場強度の強い領域で跳ね返されてしまい、その案内中心は磁力線に沿って往復運動をする。このような粒子を捕捉粒子と呼ぶ。磁力線を横切るドリフトのために、捕捉粒子の案内中心の往復運動は磁気面方向に幅を持ち、その軌道の形状から、バナナ運動と呼ばれる。捕捉粒子の個数は、プラズマ密度に応じて変化するため、密度勾配があると、各磁気面で行き帰りの捕捉粒子の案内中心の個数に差が生ずる。これが正味の磁力線方向の電流を生み出すことになり、この電流をブートストラップ電流と呼ぶ。
フラクタル磁カ線
Fractal Line of Magnetic Force : トーラスを巡る磁力線がある局所横断面を通過する時の点列(ポアンカレ写像)が自己相似形をしているとき、この磁力線をフラクタル磁力線と呼ぶ。
プラズマスバッター型重負イオン源
仕事関数をさげた金属表面をイオンビームでスパッターすると、負イオンになった金属イオンが出てくる。負電圧にバイアスした金属電極をプラズマ中に置いておくと、プラズマイオンが電極表面のシースで加速されて金属に当たり、同様に金属負イオンがスパッターにより生成される。このような原理の重負イオン源が最近開発されている。この方法は、大電流が得られる、生成されるビームのエネルギー発散が小さいなどの利点があり、タンデム加速器、表面分析、表面形成、プラズマ診断などにひろく応用されるようになってきた。
ブランケット
Blanket : 核融合炉の炉心プラズマの周囲に配置された構造物の一つ。ブランケットの役割は、(1)炉心プラズマ中の核融合反応で発生した中性子をブランケットに含まれるリチウムと反応させることによって核融合の燃料であるトリチウム(三重水素)を生産すると同時に、(2)中性子の持つ運動エネルギーを熱エネルギーに換えることである。この熱エネルギーが取り出されて発電に利用される。
プラズマ偏光分光
Plasma Polarization Spectroscopy : 光などの電磁波は、ひもの一端を固定して、他端を振動させて波を伝播させたときのように、電場の振動方向が進行方向に垂直なある特定の方向をもっている。これを偏光方向、または、その面を偏波面という。通常は、いろいろな方向のものが混ざり合っているが、特定の方向のものが多いときに、その電磁波は偏光していると呼ばれる。プラズマからの電磁波の放射や、電磁波を入射したときのプラズマの振る舞いについても、この偏光の効果を取り入れて解析することによって、プラズマ中の電場や磁場に関するさまざまな情報が得られる。こうした分光測定を偏光分光という。
プラズマ輸送(参照:新古典理論)
Plasma Transport : 制御熱核融合の実現のためには、高温プラズマを一定の空間内に、ある時間だけ閉じ込めておく必要があるが、プラズマ中の熱力学的な力や不安定性による乱流揺動が原因となってプラズマ粒子やその熱エネルギーは閉じ込め磁場を横切って逃げて行く。このようなプラズマの拡散あるいは対流現象をプラズマ輸送と呼ぶ。プラズマ中の粒子および熱の輸送は、粒子軌道に対するクーロン衝突のみの影響を取り扱う新古典輸送理論では説明できない。この新古典輸送理論では説明できない輸送を異常輸送と呼んでいる。異常輸送はプラズマの様々な微視的揺動がその原因として考察されてきたが、いまだに実験を説明し得る状況にはない。エネルギー閉じ込め時間の改善につながるプラズマ異常輸送問題の解明は、現在の緊急の研究課題の一つである。
プロトタイプ
Prototype : 製品または装置などの量産や実用にいたる前の段階にある原型となるもの。自動車や航空機の場合、試作車、試作機の意味で用いられる。
プローブビーム
Probe Beam : 収束性の良い粒子あるいは光の流れを一般にビームと呼ぶが、これをプラズマ中に入射してプラズマ計測に用いるものを特にこのように呼ぶ。加熱の目的と共用されることもある。
べータ値
Beta (β) Value : プラズマの性能を表す指標の一つで、プラズマ圧.力の磁場圧力に対する比として与えられる。磁場閉じ込め核融合実験装置においては、プラズマ外部の導体を流れる電流による磁場が閉じ込め磁場配位を作るために必要で、そのためのエネルギーが必要となる。トカマクのようにプラズマ内部を流れる電流も閉じ込め磁場の一部を作るが、その電流を流すためのエネルギーがやはり必要となる。したがって、べータ値が高いほど、低い磁場で効率よくプラズマを生成したことになる。核融合炉では5%以上のべータ値が必要とされている。このため、プラズマの高べータ化実験は大切なテーマの一つである。
ヘリオトロン型
Heliotron : ヘリカル系の一つで、宇尾光治(元京都大学ヘリオトロン核融合研究センター長)が創案し、ヘリオトロン磁場によるプラズマ閉じ込めを昭和36年に日本物理学会誌で提唱している。
ヘリオトロンE
Heliotron E : 京都大学ヘリオトロン核融合研究センターのヘリカル型プラズマ実験装置。昭和55年完成。装置パラメータは、大半径:2.2m、平均小半径:約20cm、磁場:1.9テスラ。楕円断面を持つプラズマ断面のトーラス方向のねじれの回数は19であり、現在稼働中のヘリカル装置の中では最も大きい(高い)アスペクト比を持つ。高アスベクト比による非常に強い磁気シアが特長である。
ヘリカル形状
Helical : 一般には、「らせんの」または「らせん形の」の意。ここでは、ドーナツ型のプラズマ閉じ込め容器の周りにらせん状のコイルを巻いて、それに流れる電流が作る磁場でプラズマを閉じ込めるプラズマ実験装置のタイプを意味する。このタイプのプラズマ実験装置では、トカマク型と違いプラズマを閉じ込めるためにプラズマ自身に電流を流す必要がなく、そのため定常的な運転が可能となる。
トカマク型はトーラス方向に回転対称性(軸対称性)があるが、ヘリカル型は対称性がなく非軸対称である。ヘリカル型のプラズマ閉じ込め装置には、ステラレーター型、ヘリオトロン型、トルサトロン型、ヘリアック型、ヘリアス型などがある。核融合科学研究所で建設中の大型ヘリカル装置(LHD)は、ヘリカル型のうちヘリオトロン型に属する。
ペレット入射
Pellet Injection : 小さな固体片を「ペレット」という。この用語は原子炉での燃料を固めたものから、象の餌としてわらなどを塊にしたものまで、非常に広い分野で使われている。プラズマ実験では、水素同位体ガスを極.低温に冷やして固化させたものを水素(同位体)ペレットと呼ぶ。水素ペレットを用いた効率の良い粒子補給や、炭素やリチウムなどの不純物ペレットを用いた計測などのために、これらのペレットを高速に加遠してプラズマ中に注入することを「ペレット入射」という。「ドロップレット法」はペレット生成法の1種で、水素同位体ガスを冷却して液体状にし、これをノズルから滴下する時に超音波等の振動を加えて、球状の液滴を多数作くり出しこれを真空中で固化して多数のペレットを作り出す方法である。「2段ガスガン法」はペレットを加速する方法の一つ。ピストンとペレットの間にガスを充填しておき、ピストンを後方から高圧ガスなどで加速する。ピストンが走りだし、充填してあったガスを断熱圧縮することにより高温高圧ガスを生成しペレットを加速する方法である。
ホイスパリングギャラリー型
Whispering Ganery Mode : 高い周波数帯のマイクロ波発振器の一型式、円周方向に短い波長の多数の波数を持つ。
保管廃棄
放射性物質またはそれによる汚染物を、排気・排水・焼却等の形で環境に放出することなく、一定の場所に廃棄物として保管することをいう。保管廃棄設備を設けて管理することが必要である。
捕捉粒子(参照:磁場リップル)
Trapped Particle : トーラス系プラズマにおける粒子運動では、磁力線方向の速度成分が十分大きい場合、粒子はほぼ磁力線に沿って1つの方向に運動し、閉じた磁気面が存在すれば良い粒子閉じ込めが得られる。しかしながら、磁力線方向の速度成分が小さい場合、磁力線方向に磁場リップルがあると、粒子は反射点と呼ばれる磁力線上の2つの点の間で往復運動をする。このような粒子を捕捉粒子という。捕捉粒子は磁気面を横切って運動するため、粒子閉じ込め上の問題を引き起こす。特に、高速粒子の場合は磁気面からのずれが大きくなり、粒子輸送に大きな影響を与える。
保存ハミルトン系
保存力学系の1つで、系の時間発展がハミルトン正準運動方程式により支配されるものをいう。
ボーム拡散
Bohm Diffusion : ジャイロボーム拡散参照。
ポロイダル
Poloidal : ドーナツ状のトーラス配位を記述するとき、3つの方向を指定する必要がある。ドーナツの穴の周りをめぐる方向をトーラス方向と呼び、その方向の角度をトロイダル角と呼ぶ。ドーナツの断面の中心からドーナツの外側へ向かう方向を径方向、動径方向、または、小半径方向と呼ぶ。ドーナツ断面の中心の周りをめぐる方向をポロイダル方向と呼び、その方向の角度をポロイダル角と呼ぶ。ヘリカルコイルはトロイダル磁場とポロイダル磁場を発生する。ポロイダルコイルはヘリカルコイルとは独立にポロイダル磁場を発生する。ポロイダル電源はポロイダルコイル電流を制御する。トロイダル磁場に沿う方向を平行方向、ポロイダル磁場に沿う方向を垂直方向とも呼ぶ。
ポンプリミター(参照:ローカルアイランドダイバータ)
Pump Limiter : リミターの形状を薄い板状にし、一部(数%)の粒子流を排気ダクトに面したリミターの裏面に導いて粒子を排気するリミターをポンプリミターと呼ぶ。このリミターの先端には必然的に熱負荷が集中するので、将来の装置には不向きである。
ま行
マイクロシーベルト
放射線防護において用いられる「線量当量」の単位。放射線が人体に当たったとき、ある器官の単位質量(1kg)当たりの吸収エネルギー(J)に、放射線の種類による生物効果の差を表す線質係数及ぴ他の修正係数を掛けたものを「線量当量」と定義し、その単位をシーベルト(Sv)という。マイクロシーベルト(μSv)はその100万分の1である。従来よく用いられている単位レム(rem)とは、1Sv=100remの関係にある。
マイクロ波反射計
数十ギガヘルツの周波数を持つマイクロ波をプラズマ中に入射し、その反射波を測ることによって、プラズマの密度分布や密度揺動を測定する計測器。
マイノリティ加熱(参照:ICRF)
Minority Heating : イオンサイクロトロン共鳴吸収は一般的には強い吸収機構であるが、速波は右回りの偏光面を持っており、実際には波動の吸収(加熱)を期待できない。そこで、重水素に小量の不純物としてHまたは3Heを混入させる加熱の手法が開発された。不純物の種類に従い、Hマイノリティ加熱、あるいは、3Heマイノリティ加熱とよぶ。
マクロスケール粒子シミュレーション
プラズマの集団的振る舞いを調べるのに、プラズマを構成する個々の粒子に注目し、シミュレーションを実行する方法がある。この方法を粒子シミュレーションという。一般に、この方法は粒子運動の特徴的な時間や空間スケール(ミクロスケール)に制約されるために、閉じ込め装置全体にわたる現象(マクロスケール現象)の解析には、不向きとされている。このような困難を克服し、ミクロな粒子運動論的効果とマクロな閉じ込めスケールの現象を同時に矛盾無く解析することを目的として開発されたきたのが、マクロスケール粒子シミュレーションと呼ばれる粒子シミュレーション手法である。
ミラー伝送
導波管を用いないマイクロ波の空中伝送の方法で、進行方向を変えるために鏡面(ミラー)を用いる。
モーショナル・シュタルク法
Motional Stark Method : シュタルク効果は電場中で原子などが発光するとき、電場がないときには単一の波長の光だったものが、電場の効果により異なった波長の光に分かれる現象をいう。プラズマ中に入射した粒子ビームと磁場との相互作用で生じる電場を利用して起こさせるシュタルク効果をモーショナル・シュタルク効果という。発光する光の偏光方向を計測することにより磁力線の向きが分かる。この計測法のことをいう。
モンテカルロ・シミュレーション
Monte Carlo Simulation : ランダムな素過程を含む事象に対し、その素過程のランダムさがある確率法則によって支配されていると考えられるとき、その確率過程を乱数を用いて表現し、事象全体の振る舞いを調べるために行う計算機シミュレーションをモンテカルロ・シミュレーションという。
や行
有限べータ効果(参照:シャフラノフシフト)
Finite β Efiect : ヘリカル系やトカマクのような環状系の装置では、プラズマの圧力の増大に伴いプラズマをトーラス外側へ押し出そうとする力が強くなり、シャフラノフシフトと呼ばれるトーラス外側へのプラズマのシフトが生ずる。特に、LHDのような装置においては、磁気軸付近のシャフラノフシフトが大きく、これに伴い磁気面は真空磁場と比較して大きな変形を受け、これがMHD安定性、粒子軌道、プラズマの輸送等に影響を与えると考えられる。このように、ブラズマの圧力、すなわち、有限べータ化により、引き起こされる様々な効果を有限べータ効果と呼ぶ。
誘導放射化
高速荷電粒子、中性子、X線等の放射線発生を伴う実験においては、これらの放射線が実験室内の機器・装置・周辺構造材等に当たると、元来放射性ではなかったその構成物質を一部放射性物質に変換することがある。この現象を誘導放射化という。
ら行
ラーモア半径効果(有限ラーモア半径効果)
Finite Larmor Raius Effect : 磁場中に置かれた荷電粒子はラーモア運動と呼ばれる旋回運動(回転運動)を行う。この旋回運動の半径、すなわち、ラーモア半径がイオンと電子で異なることにより発生する非一様プラズマ中での静電場が、プラズマ不安定性を抑制することがしばしば見られる。このような働きをラーモア半径効果と呼ぶ。
ラングミュアプローブ
Langmuir Probe : 静電プローブともいい、電極センサーで電流対電圧特性をモニターすることにより、プラズマ中の電位や電子温度を計ることを目的とする。ただし、ブラズマ中に直接物質を入れることになるので、高温プラズマには適用できず、もっぱらプラズマ周辺部の計測に用いられる。
リークテスト(同義語:漏れ試験、気密試験)
Leak Test : 内部に期待などを封じ込める、あるいは真空に維持する容器や配管の溶接部、着脱可能な継ぎ手などの密封度を検査する試験。ヘリウムガスはあらゆる流体のなかでも最も漏れだしやすいので、主としてヘリウムを用いて漏れの有無を検査する。ここではヘリウムガスの漏れを質量分析計の原理によるヘリウムリーク検出計で検査する高精度の漏れ試験を指す。LHDでは超伝導コイルは同時に冷媒ヘリウムの容器でもあり、これらすべてが真空断熱容器(ベルジャー)のなかに収納される。このため、ヘリウムの漏れは断熱性能を劣化させるほか、漏れ込み不純物ガスによるプラズマ真空容器の真空度劣化はプラズマ実験の遂行にとって致命的である。したがって、この検査によって漏れ箇所をなくすことは極めて重要な作業である。
リサイクリング(参照:ダイバータ配位)
Recycling : 閉じ込め領域中のプラズマ粒子は、有限の閉じ込め時間のために、必然的にダイバータ板あるいはリミターと呼ばれるプラズマ対向物に直撃する。そのとき、その運動エネルギーを対向物に与え、それ自身は低エネルギーの中性粒子に変換され、再ぴプラズマ閉じ込め領域に侵入してイオン化されプラズマ粒子となる。これをプラズマのリサイクリング(再循環)と呼ぶ。プラズマ対向物が真空的に枯れていないときなどは、リサイクリングは100%を超え、ガスパフなどによる外部からの燃料粒子の補給なしにプラズマの密度は上昇する。閉じたダイバータ配位の場合は、リサイクリングは非常に低い値を示す。
離散的アルヴェン固有モード
アルヴェン固有モード参照。
リヒート現象
Reheat Phenomenon : ヘリカルプラズマの加熱中に、プラズマの密度を上昇させるための比較的強いガスパフを途中でストップすると、プラズマのエネルギーが急激に上昇する。この現象をリヒート(再加熱)現象と呼ぶ。ガスパフをストップする直前のプラズマは飽食状態にあり加熱が有効ではないが、ストップすると再び加熱が有効になるため、このように呼ばれている。この現象は過渡的ではあるが、一種の閉じ込め改善現象であり、定常的な閉じ込め改善のためのヒントを与えるものとして詳しく研究する必要がある。リヒート現象を用いて、プラズマのエネルギーを上昇させるオペレーションモードをリヒートモードと呼ぶ。
リミター配位
Limiter Configuration : トカマクに限らずドーナツ型プラズマを閉じ込める場合、ドーナツ型の金属真空容器内にプラズマを生成するが、磁場を横切って逃げたプラズマ粒子は容器壁全面と強い相互作用をし、その結果、壁から大量の金属不純物がプラズマに混入しプラズマの性能を著しく劣化させる。プラズマを容器壁から浮遊させ、プラズマと金属容器壁との広範囲の相互作用を防ぐため容器内に局所的に設置されたカーボンなどの非金属やベリリウムの穴空き円盤やブロックをリミターと呼ぶ。このような固体リミターでプラズマ境界を規定する運転形態を、ダイバータ配位と対比してリミター配位と呼ぶ。
臨界条件
核融合三重積参照。
レイノルズストレス
Reynolds Stress : 乱流状態における流体速度の揺らぎの相関。流体の運動方程式における慣一性項の流体速度の2次の非線形項から生.じる。流体運動量の輸送に対して、粒子間衝突による輸送機構とは別に、大きな効果を持つ。
レフレクトメーター
Reflectometer : マイクロ波反射計参照。
レベルミクシング
Level Mixing : 原子の構造を直感的に表現すると、原子核の周りを電子が周回しているという模型を考えることができる。この電子の周回軌道は、最も安定な基底状態から、とびとびのエネルギー差をもった、いくつかの状態を取ることができる。これをエネルギー準位(energy level)と呼ぶ。原子が強い電場の中に存在しているときには、お互いに近接した、つまりエネルギー差の小さい2つの準位は、混合して1つの準位のように振る舞う。これをレベルミクシングと呼ぶ。
ローカルアイランドダイバータ(参照:磁気島)
Local Island divertor : 磁気島(アイランド)の中にリミターヘッド(逆さ茸状の構造物)を挿入すると、プラズマからの熱と粒子はアイランド周辺の磁力線に沿って流れるため、リミターヘッド後面(ダイバータ板)に達しダイバータ配位が形成される。これをローカルアイランドダイバータと呼ぶ。プラズマに対向する構造物がトーラス中一ケ所に局在化(localize)しているため、技術的には高効率で粒子を排気することが容易である。
ロスコーン
Loss Cone: 開放端を持つミラー磁場でプラズマを閉じ込めようとするとき、磁場に平行な方向の速度が大きいプラズマ粒子は閉じ込めることができない。この閉じ込めることができない粒子の速度成分は、速度空間(速度の磁場に垂直.な成分、平行な成分を座標軸にしたもの)内で、円錐形(平行方向が円錐の軸方向にあたる)をしていることからロスコーン(損失円錐)と呼ばれる。トカマクやヘリカル系においても、ミラー磁場中でのロスコーンと類似の速度空間内の損失領域は若干存在する。
アルファベット等
ALADDIN(アラジン)
A Labelled Atomic Data Interface for Fusion Applications : 核融合研究に必要な原子・分子データを、世界各国で異なったコンピュータシステムを用いている研究者の間でスムーズに交換し合えるようにしたデータ交換のための共通フォーマット。IAEAによって提唱された共通のデータ形式を定めている。交換により取り込んだデータをモデリングのために大型計算機に直接取り込むことができるように工夫されている。
ATF
Advanced Toroidal Facility : 米国テネシー州オークリッジ国立研究所のトルサトロン型ヘリカル装置。プラズマ主半径2.1m、平均小半径27cm、閉じ込め磁場2テスラ。ねじれの回数は12。運転開始は1987年12月。この装置では、MHD的に安定なプラズマを生成することを目標として磁場配位の設計が行われた。磁気シアは、CHSと同じ程度で、ヘリオトロンEとW7-ASの中間である。
CAD
Computer Aided Design : コンピュータの画像処理能力を使って行う各種装置の設計作業、またはそのために開発されたコンピュータ・システムのこと。グラフイック・ワークステーションまたはエンジニアリング・ワークステーションと呼ばれるワークステーションの性能向上・普及により、各種装置の設計作業を効率よく行うことができるようになった。
CHS
Compact Helical Systemコンパクトなヘリカル系という意味を持った小型の装置。1対のヘリカルコイル、4対のポロイダルコイルによって閉じ込め磁場を形成する。ヘリカルプラズマの形状は楕円断面がトーラス一周の間に8回ねじれる。プラズマの主半径1m、楕円断面を円で近似したプラズマの小半径は20cmである。
したがって、本文中にもあるように、アスペクト比が5の世界で一番太ったヘリカルプラズマが生成される。アスペクト比が小さくなるにつれて、閉じ込め磁場が壊れやすくなり、このような装置をつくることが技術的に困難になる。
CHSでは、ヘリカルコイルやポロイダルコイルの設計製作に細心の注意を払うことにより、しっかりした閉じ込め磁気面を作ることに成功した。閉じ込め磁場の強さはをテスラ、プラズマを加熱するための入カパワーは現在までに2メガワット弱である。電子温度は1200万度、イオン温度は500万度、エネルギー閉じ込め時間は12ミリ秒(各々異なるプラズマにおいて)まで達成されている。
CXS
荷電交換分光参照
EBR-II(高速実験炉)
Experimental Breeder Reactor : 米国アイダホ州アルゴンヌ国立研究所西部支所に設置されている高速炉(原子炉)。日米協力による核融合炉材料の中性子照射研究に使用されている。
ECE計測
Electron Cyclotron Emission : 電子は磁場中では螺旋状の軌適を描いて運動する。このとき、電子は電磁波を放射する。この放射を計測するのがECE計測であり、これにより、電子の温度を測ることができる。
ECH
Electron Cyclotron resonance Heating : 電子サイクロトロン共鳴加熱は磁場中の電子のサイクロトロン共鳴加熱は磁場中の電子のサイクロトロン周波数に等しい周波数の高周波を印加することによってプラズマ中の電子を共鳴的に加熱する方法。加熱領域が共鳴層付近に限られているために電子温度の局所的な制御ができる。4-5テスラの閉じ込め磁場を必要とする磁場閉じ込め装置においては、100GHzを超えるミリ波帯の高周波源が必要であり、通常ジャイロトロンと呼ばれる大電カミリ波発振管が使われている。この方式はプラズマの加熱だけでなく、プラズマ生成や電流駆動にも利用でき、ヘリカル装置では必須の加熱方法である。
ELMy-Hモード(参照:Hモード、径電場分岐理論)
Hモードのプラズマでは、プラズマ周辺近傍に「輸送障壁」と呼ばれる輸送係数の低い領域ができている。輸送障壁が間欠的に消え、外部ヘプラズマの粒子やエネルギーがパルス状にはき出される現象が見られ、ELM(Edge Localized Modes)と呼ばれている。細かいELMがひんぱんに現れ続けるHモードをELMy-Hモードと呼ぶ。不純物濃度が比較的低いことや、密度の上昇が強過ぎないことから、定常的なHモードを実現する一つの方法とも考えられている。各種ELMには様々な原因があるが、ELMy-Hモードは、理論的には径電場分岐モデルが自発的脈動を予言しているので、それと対応するのではないかと考えられている。
FFTF/MOTA
Fast Flux Test Facility/Material Open Test Assembly : 高速中性子東実験施設/開放型材料試験装置米国ワシントン州ハンフォードに設置されている高速炉(原子炉)FFTFとそれに挿入して材料の中性子照射を行うための容器MOTA。日米協力による核融合炉材料の中性子照射研究に使用されていたが、高速炉FFTFは現在稼働していない。
FNA
Fast Neutral Particle Energy Analyzer : 高速中性粒子エネルギーアナライザ。磁場閉じ込め装置では、荷電粒子は閉じ込め領域から出てくることができないため、プラズマ中での荷電交換反応により中性となった粒子を測定し、そのエネルギー分布を測ることにより、プラズマ中のイオン温度を推定する。また中性粒子入射加熱や高周波加熱の行われている場合は、高エネルギーの中性粒子を測定することにより、プラズマ中での高エネルギーイオンの振る舞いを研究する。
GHz
交流の周波数の単位(ギガヘルツ);10億ヘルツ。
HFIR
High Flux Isotope Reactor : 高中性子束同位体生産用原子炉米国テネシー州オークリッジ国立研究所に設置されている混合スペクトル炉。日米協力による核融合炉材料の中性子照射研究に使用されている。
HINTコード(ヒントコード)
三次元磁気流体平衡配位を数値的に求めるために開発された平衡コードで、緩和法と呼ばれる計算手法が用いられている。このコードの最大の特徴は、平衡を求める際の前提として、磁気面の存在を仮定していないところにある。このため、既存の3次元平衡コードでは取り扱うことのできなかった、有限圧力効果による磁気島の発生を矛盾なく解くことができる。このコードをヘリオトロン配位などの実際的な磁場配位に適用することにより、三次元有限圧力平衡解における磁気島の発生や平衡のβ限界等に関する研究が行われている。
Hマイノリテイ加熱
マイノリテイ加熱参照。
IEA
Intemational Energy Agency : 国際エネルギー機関 1974年11月、第一次石油危機後に設立された先進石油消費国による国際機関で、本部はパリ。OECDの下部組織。代替エネルギー開発などの国際協力もその活動範囲に入っている。核融合に関しては、核融合調整委員会(FPCC)を設置し、「プラズマ・壁相互作用計画(TEXTOR計画)」などの国際協力を実施している。
IAEA
Intenational Atomic Energy Agency : 国際原子力機関 1957年9月に設立された、原子力平和利用によって平和・健康・繁栄に役立てること及び、原子力利用が軍事目的に利用されないよう保障することを目的とした国際機関。本部はウィーン。一般には核査察などで有名であるが、核融合の分野では国際核融合研究協議会(IFRC)を置き、「プラズマ物理及び制御核融合研究に関する国際会議」をほぼ2年ごとに開催したり、核融合研究に必要な原子・分子データを国際的に収集・交換するなどの活動を行っている。また、ITER計画もこのIAEAの活動の一環として実施されている。
ICRF(参照:マイノリテイ加熱、イオンバーンシュタイン波加熱)
Ion Cyclotron Range of Frequency : イオンサイクロトロン周波数帯のことでイオンサイクロトロン周波数の0.5から4倍程度の周波数帯をいう。この周波数帯は通常50MHzを中心としたVHF(超高周波数)に属する。この周波数帯では、マイノリティ加熱、2種イオン混成共鳴加熱、イオンバーンシュタイン波加熱、高次高調波加熱等、多様な加熱手法があり加熱の最適化に使われている。
ICRF速波電流駆動
電流駆動参照。
INSPEC
Information Services for the Physics and Engineering Commmities : 英国の電気工学研究所(Institute of Eletrical Engineers(IEE))の一機関であるlnfomation Service for Physics and Engineering Communities(INSPEC)が作成した文献データベースで、A:物理学、B=電気工学・エレクトロニクス、C:コンピュータ制御工学及びD:インフォメーション・テクノロジーに関する分野が網羅されている。
ITER
Intemational Thermonuclear Experimental Reactor : 日、米、EC、ロシアの4極の協力により進められているトカマク型核融合実験炉開発計画である。1988年から1990年12月までの約3年間の概念設計活動(CDA)を踏まえ、1992年7月より工学設計活動(EDA)が開始された。その設計目標は自己点火、核燃焼プラズマに関するあらゆる時間スケール以上の長時間燃焼の実現、及び発電の実証などである。装置パラメータなどは現在検討中である。
JET
Joint European Torus : 英国カラム研究所に隣接して設置1されている世界3大トカマクの一つ。1983年にECにより建設された。オープンダイバータ配位を有し、プラズマ主半径2.96m、プラズマ小半径1.25×2.1mの縦長断面をもつ。閉じ込め用トロイダル磁場3.5テスラ、プラズマ電流最大7MA(メガアンペア)。1991年11月に世界で初めて、燃料の一部に三重水素(トリチウム)を用いてDT核燃焼の予備的実験を行った。ポンプダイバータ配位(ダイバータ室にシールド付きクライオポンプを設置し排気能力を持たせる)に改造後、1994年2月より実験が再開された。
JIPP T-IIU
Japan Institute of Plasma Physics Torus-II Upgrade : 名古屋大学ブラズマ研究所の時代に稼働を開始したトカマク型装置で、プラズマ主半径R=91cm、同小半径a=23cmの小型装置であるが、トロイダル磁場が3テスラと比較的強く、平均電子密度が1m2当たり最大1020個、電子温度が最高3000万度(約3keV)、イオン温度が最高2000万度、エネルギー閉じ込め時間が最大40ms(ミリ秒)の高性能のブラズマを実現している。現在、この特長を生かし、LHDのための計測機器開発と閉じ込め改善の方策に関する研究を推進するため、LHD支援研究装置として運転されている。
JT-60U
JAERI Tokamak-60 Upgrade : 日本原子力研究所那珂研究所に設置されている世界3大トカマク装置の一つ。それまでのJT-60装置を改造(Uはアップグレード)し、1991年4月より運転が再開された。オープンダイバータ配位を有し、プラズマ主半径3.4m、プラズマ小半径1.0m×1.6mの縦長断面を持つ。閉じ込め磁場4.2テスラ、最大プラズマ電流5メガアンペア。核融合三重積1.1X1021m-3sec keV、LHRFによる3.6メガアンペアの完全電流駆動、などの世界最高値を記録している。
LHD
Large Helical Device : 核融合科学研究所が現在建設中の世界最大のヘリカル型プラズマ閉じ込め装置(主半径3.9m、磁場強度4テスラ)であり、ヘリカル型の中でヘリオトロン型に分類される。プラズマ真空容器の外部に設置されたコイル(ここでは超伝導の1対のヘリカルコイル、3対のポロイダルコイル)によって閉じ込め磁場配位が形成される。楕円プラズマ断面のトーラス方向のねじれの回数は10である。ヘリオトロン-Eの19, ATFの12, CHSの8と比べると、回数は小さい部類に属し比較的低アスペクト比であるといえる。
LHD則
ヘリカルプラズマのエネルギー閉じ込め時間を装置パラメータ、プラズマパラメータを用いて表した経験則。LHD装置を設計した時に、その性能予測を行うために導き出されたため、LHD則と呼んでいる。当時としては、ヘリオトロンEに代表される高アスペクト比の装置の実験データを基にしたが、アスペクト比のもっと低い最近のヘリカル装置にも適用できることがわかった。また、トカマクにも適用できる。これは、LHD則がジャイロボーム則によく似ており、ドリフト波乱流に基づく輸送に立脚したスケーリング則になっていたからである。
MHD
プラズマは、それぞれ様々な速度を持つ電子及びイオンの集合である。プラズマの振る舞いを記述する1つの方法として、電子及びイオンの集合を平均的な速度を持った電荷を持つ流体として扱うことが考えられる。流体として扱われた電子及びイオンは、各々物理法則に従って運動するが、相互に影響を及ぼすため、更にこれら2つの流体を1つにまとめて扱うことが可能となる。この1つにまとめられた流体(一流体)の物理を扱う学問を磁気流体力学(Magneto Hydro Dynamics)と呼び、その頭文字を取って、MHDと略称している。
MHD不安定性
MHD Instabilities : プラズマを巨視的にとらえて、電荷を持つ一流体として扱う手法を磁気流体力学(MHD)と呼ぶ。MHDによって記述される不安定性をMHD不安定性又は巨視的不安定性と呼ぶ。MHD不安定性は、その駆動機構により、電流駆動型モードと圧力駆動型モードに大別される。また、電気抵抗を無視する取扱いで表現されるMHD不安定性を理想MHD不安定性と呼び、電気抵抗を考慮して表現されるMHD不安定性を抵抗性MHD不安定性と呼ぶ。磁場閉じ込めのプラズマでは、巨視的な摂動が成長し、急激に閉じ込めが劣化する現象は、MHD不安定性によるものであると考えられる場合が多い。プラズマの流体的な取扱いで記述されるMHD不安定性に対して、プラズマを構成する電子及びイオンの速度空間の分布関数が関与する不安定性を速度空間不安定性または微視的不安定性と呼ぶ。
MW
電力の単位(メガワット);百万ワット。
NbTi(ニオブチタン)
最もよく用いられる、ヘリウム冷却を要する高磁場用超伝導物質のひとつで臨界温度は9.4ケルビン(K)、臨界磁場は4.2Kにおいて13テスラ(T)、臨界電流密度は5Tにおいて2×105A/m2が代表的な値である。これをもう一つの代表的なNb3Snとくらべると、後者に対する比率でそれぞれ約0.5, 0.5, 0.6倍と劣るが、反面、熱拡散が3倍以上に良く、またなによりも製造と取扱いにおいて容易であることから、超伝導導体を三次元的に成形加工する必要があるLHD用ヘリカルコイルではNbTiが採用されている。
PID制御
制御動作の一種。制御動作とは、制御量が目標値から外れたときに、動作信号(制御量と目標値の差)に対して制御装置が行う応答のこと。制御動作には2位置動作(例えば、ONとOFF)、比例動作(P動作)、積分動作(I動作)、微分動作(D動作)がよく用いられる。PID動作とは、P動作に、オフセットを除去する働きを持つI動作と振動を減衰する働きを持つD動作とを組み合わせたもので、安定かつ精度のよい制御が期待できる。
R&D
Research and Development研究開発のこと。新しい実験装置を製作するときなど、既存の技術だけでは不十分な場合に、装置を設計・製作する前に十分なR&D(研究開発)が必要となる。
NBI(中性粒子入射)加熱
Neutral Beam Injection : 中性粒子入射加熱は、プラズマ温度の数十倍以上のエネルギーを有する高速の中性粒子をプラズマ中へ入射し、そのエネルギーをプラズマ電子およびイオンに与えることによりプラズマを加熱する方法をいう。中性粒子ビームは、磁場の影響を受けることなくプラズマに入射することができるため、NBI加熱は磁場閉じ込め核融合実験装置の追加熱(トカマクのオーミック加熱プラズマを更に加熱する意味を持つ、第2段加熱ともいう)の手段として幅広く用いられている。
RFP(逆転磁場ピンチ)
Reversed Field Pinch : 軸対称トーラス系に属するプラズマ閉じ込め配位の1つ。トロイダル・プラズマ電流によるポロイダル磁場と外部コイルによるトロイダル磁場によってプラズマを閉じ込める。トカマクに比べてこれらの磁場が同程度の大きさであるために比較的高べータのプラズマを安定に閉じ込めることができる。初期条件に依存しない配位が実験的に形成され(自己組織化)、非線形力学の観点からも近年注目をあびている。
RMSAFE
Radiation Monitoring System Applicable to Fusion Experiments : 当研究所で開発した放射線モニターシステム。特徴:パルス的発生放射線を自然放射線と識別して積算する。複数の測定器の配置により、微弱な単一パルス信号を系全体で記録する。
STB(参照:リサイクリング、不純物)
Solid Target Boronization : 核融合実験装置の真空容器内壁や容器内に設置されたリミターなどをボロン(硼素)でコーティングするための手法の1つ。具体的な方法としては、ボロンカーバイド(炭化硼素)を含んだグラファイト(黒鉛)の小片や丸棒をプラズマの周辺部に挿入し1000度以上に加熱し、プラズマ中にボロンを拡散させる。プラズマが消滅した後プラズマ中のボロンは容器壁やリミターに達し、付着する。このように付着したボロンは、容器壁やリミターからの不純物放出や燃料粒子のリサイクリング(再循環)を抑制し、プラズマの性能を向上させる。なお、ボロンは燃料である水素や重水素に対し不純物であるが、高温の核融合プラズマでは金属不純物に比べその影響は無視できる。
STRS
Space Time Resolved Spectroscopy : 空間時間分解能力をもった分光計測をいう。
TFTR
Tokamak Fusion Test Reactor : 米国ニュージャージー州プリンストン大学プラズマ物理研究所のトカマク型プラズマ実験装置。世界三大トカマクの中ではもっとも早く1982年12月に運転を始めた。リミター配位で、プラズマ主半径2.45m、プラズマ小半径0.85mの円形断面を持つ。閉じ込め磁場5.3テスラ、最大プラズマ電流3メガアンペア。1993年末には重水素と三重水素(トリチウム)による世界初の本格的DT核燃焼実験を行い、6.3MW(メガワット)の核融合出力を得た。
TLD
Thermo-Luminescence Dosimeter : 熱蛍光線量計。硫酸カルシウムなどの物質は、放射線に当たると内部的励起状態を生じ、これに熱を加えると蛍光を発して元の状態に戻る。この性質を利用した小型の積分型放射線線量計であり簡便で広く用いられている。
VMEデバイスコントローラ
VME(Versa Module Europe)は16/32ビットマイクロコンピュータ応用製品の世界標準バス(バスとは信号の集まりのこと)である。VMEバスの規格はIEEE1014により規定されている。このVMEバスを使用し、各種機器に対し直接インターフェイスを行うものがVMEデバイスコントローラである。
W7-AS
Wendeistein-7 Advanced Stellarator : ドイツ・マックスプランク・プラズマ物理研究所において開発されてきた一連のステラレーターをヴェンデルシュタイン装置と呼んでいる。W7-ASが現在稼働中、運転開始は1988年10月。プラズマの主半径2m、平均小半径20cm、閉じ込め磁場2.5テスラ。磁気シアはほとんどゼロである(これはヴェンデルシュタイン路線の方針)。この装置の特長は、新古典理論を基にして評価されるプラズマ物理量を最適化するために、連続巻きのヘリカルコイルを用いずにモジュラーコイルを採用していることである。
YAGレーザー(ヤグレーザー)
固体レーザーの1種で、ガラス中にイットリウムなどの元素をわずかに混ぜて、レーザー媒質としたもの。YAGレーザーは高パワー・高繰り返し発振が可能で、計測用によく用いられている。