2020年8月27日 ⎮ 研究成果 高イオン温度状態の維持を妨げる原因を探る
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大型ヘリカル装置(LHD)の高イオン温度放電では、高エネルギーイオンの圧力によって発生する磁場振動の観測と共にイオン温度が低下する現象が現れていました。LHD重水素実験における中性子発生分布の計測と数値シミュレーションを駆使することで、磁場振動によってLHDプラズマの図に赤丸で示した部分の中性子発生量が低下、則ちプラズマを加熱する高エネルギーイオンがプラズマ外へ逃げたことが可視化され、磁場振動によるイオン温度低下現象の理解が進みました。
大型ヘリカル装置の高イオン温度プラズマ放電においては、プラズマを加熱する高エネルギーイオンが起こす磁場振動の発生によって、イオン温度が低下してしまう現象が観測されてきました。今回、重水素プラズマ実験の中性子発生分布を計測することで、高エネルギーイオンがこの磁場振動によってプラズマの外に逃げていることが分かりました。この結果に基づき、高イオン温度状態を長時間維持するための手法の構築が期待されます。

大型ヘリカル装置(LHD)では、1億2000万度を超えるイオン温度を達成しておりますが、高イオン温度プラズマ放電においては、プラズマを加熱する高エネルギーイオンの圧力によって発生する磁場振動が度々発生します。この磁場振動が発生すると、イオン温度が低下してしまう現象が観測されてきました。今回、この磁場振動とイオン温度低下の関係を調べるため、磁場振動が発生したプラズマ放電における高エネルギーイオンの空間分布取得実験を行いました。

本研究チームは、高エネルギーイオンと主プラズマイオンとの核融合反応によって主に生成される僅かな中性子の発生分布を計測することで、高エネルギーイオンの空間分布を取得しました。この中性子発生分布計測装置は、多数の視線を持つ中性子計測器から構成されており、本研究チームが最新のデジタル回路技術を用いて開発を行い構築したものです。磁場振動の発生前後の中性子発生分布を比べると、プラズマの特定の場所を見込む視線の中性子発生量が大きく減少していることが分かりました。また、磁場振動の大きさと高エネルギーイオン減少量との関係を調べると、高エネルギーイオンの減少量は、磁場振動の大きさに比例することがわかりました。

本研究では、更に高エネルギーイオンの軌道追跡数値シミュレーションを用いて、磁場振動が発生した際に、高エネルギーイオンがどう振舞っているのか、そしてそれに伴って中性子発生分布がどのように変化するかを詳細に調べました。実験で観測された特定のプラズマ位置における中性子発生量の大きな減少は、磁場振動を発生している高エネルギーイオンがプラズマの外に逃げていることに対応していることが分かりました。この成果によって、磁場振動とプラズマを加熱している高エネルギーイオン閉じ込めとの関係の理解が大きく進展し、LHDプラズマの高イオン温度状態の長時間維持につながる重要な知見を得ることができました。

本研究は、核融合科学研究所の小川国大、磯部光孝らの研究グループと九州大学の松浦秀明准教授、米国オークリッジ国立研究所のD. A. Spong博士との協力によって進められ、この研究成果はK. Ogawa et al., "Energetic particle transport and loss induced by helically-trapped energetic-ion-driven resistive interchange modes in the Large Helical Device", Nuclear Fusion 60 (2020) 112011(NIFS repository)として、国際原子力機関が発行している学術論文誌「ニュークリアフュージョン」に2020年8月27日付けで掲載されました。