研究成果

64画素百万フレーム毎秒で映し出すプラズマゆらぎ画像

大型ヘリカル装置(LHD)のプラズマ実験で使用するための超高速カメラを用いた計測装置の開発を行いました。プラズマ発光をカメラ用望遠レンズで取り込み、光ファイバーで計測装置に伝送します。超高速カメラは縦・横8×8の合計64画素しか持たない代わりに、百万フレーム毎秒の撮像スピードを誇ります。この高速撮影に特化した装置を用いて、プラズマの濃淡の高速変化を映し出すことに成功しました。

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(左)8x8画素の超高速カメラの撮像素子。(右)撮影されたプラズマ画像(データ補間を適用)。赤色と青色は、それぞれプラズマ密度の濃淡を表す。

核融合発電を妨げる大きな問題の一つに、プラズマ乱流輸送問題があります。プラズマ乱流とは、プラズマ中に発生した小さな渦状の流れです。プラズマ乱流が発生すると、中心部分の温度が高いプラズマが外に吐き出されてしまいます。この問題を解決するためには、プラズマ中で生まれた乱流の特徴を理解し、コントロールする手法を開発しなければなりません。そのための第一歩として、様々なプラズマ乱流計測手法が考案され、実際に運用されています。プラズマ乱流の特徴の一つに、渦の形が10万分の1秒程度ごとに変化するなど、変化がとても速いことが挙げられます。このため、超高速撮影を行うための64画素カメラを用いた計測装置を開発しました。

本研究チームは、プラズマ装置の真空窓に、望遠カメラレンズ(Mamiya f300mm,F/2.8)を取り付け、得られた画像を100m以上の長さの光ファイバーを用いて離れた位置に設置してある計測装置に取り込みました。特定の色の光のみを透過する干渉フィルターと呼ばれる素子を通過させることで、プラズマ内部から出てくる光のみを選び、計測装置に照射します。計測装置は、縦・横8×8の64画素しか持たない(左図)代わりに、撮像スピードを最大で百万フレーム毎秒に設定することができます。この計測装置は、プラズマ内部から発生する微弱な光を電気信号に変換することのできる、アバランシェフォトダイオード(浜松ホトニクス製)を撮像素子として用いています。この計測手法は、プラズマ中に打ち込んだ加熱用高速ビームとプラズマの衝突によって生じる光を観測するため、「ビーム放射分光計測」と呼ばれています。

製作した計測装置を実際のプラズマ実験で運用し、プラズマ内部のゆらぎの計測に成功しました。得られたゆらぎの画像を、右図に示します。赤色と青色は、それぞれプラズマ密度の濃淡を表します。時間が経過すると、ゆらぎの大きさや位置が変化していました。このゆらぎが発生することで、プラズマの熱が外部に逃げてしまい、温度の上昇が妨げてしまうと考えられています。新たな計測器を導入することで、これまでは見ることのできなかったプラズマ内部のゆらぎの様子が観察できるようになりました。今後は、より詳細なゆらぎの発生メカニズムや、その制御方法などの研究を行なっていく予定です。

本研究は、核融合科学研究所の小林達哉、吉沼幹朗、居田克巳の研究グループによって進められ、この研究成果は、プラズマ物理学に関する国際的な学術論文誌「プラズマ・フィジックス・アンド・コントロールド・フュージョン」に2020年10月28日付けで掲載されました。

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