研究成果

核融合プラズマ実験における標準的な管理・計測機器、
高帯域・高速応答・高ノイズ耐性の中性子束モニタを開発

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大型ヘリカル装置においては、3台の中性子束モニタ(フィッションチェンバー)が装備されています。

大型ヘリカル装置(LHD)では、2017年3月から、プラズマ性能の向上を目的として、重水素ガスを用いたプラズマ放電、所謂重水素実験を行っています。重水素実験においては、重水素ー重水素核融合反応によって、僅かに中性子が発生します。発生した中性子量の管理のため、LHDには3台の中性子モニタが装備されています。

本論文では、LHDの重水素実験に向け、核融合科学研究所と東芝エネルギーシステムズとで共同開発した中性子束モニタの開発研究内容、及びその性能について報告しました。 日本では、これまで日本原子力研究開発機構(現量子科学技術研究開発機構)のJT-60装置において中性子束モニタが開発され使用されておりましたが、現在それに用いられているアナログ回路部品が調達不可能となっており、同製品を制作することが不可能な状態にありました。そこで、最新のデジタル回路技術を駆使することで、広い測定領域、早い時間応答、及び高い電磁ノイズ耐性を併せ持ったLHD重水素実験用中性子束モニタを実現すべく、研究開発を行いました。

開発においては、京都大学の三澤教授の協力の下、デジタル回路の試験を行いました。9桁以上に渡る測定レンジを持ち、2000分の1秒の時間毎の中性子発生率データを取得可能であり、及びプラズマ放電に伴って発生する僅かな電磁ノイズをも抑制する機能を搭載したシステムの研究開発に成功しました。重水素実験開始後は、本中性子束モニタは非常に安定した動作を示しました。 さらに、それを用いることで、LHDにおける高エネルギー粒子研究が大きく進展し、多数の優れた研究成果が生まれました。[一例として「大型ヘリカル装置における包括的な中性子計測システムを用いた高エネルギー粒子閉じ込めに関する研究」]。 また、その優れた性能、安定性が評価され、現在量子科学技術研究開発機構のJT-60SAや、ITERの中性子束モニタの信号処理回路としての採用が検討されており、これからの核融合プラズマ実験における標準的な管理・計測機器としての活躍が期待されます。

本研究は、学術論文誌「プラズマ・アンド・フュージョン・リサーチ」に D. Ito et al., “Development of a Wide Dynamic Range Neutron Flux Measurement Instrument Having Fast Time Response for Fusion Experiments”, Plasma and Fusion Research 16 (2021) 1405018. として、2021年2月26日付けで掲載され、プラズマ・核融合学会の第20回産業技術賞に選ばれました。